帝国への海図 Ⅱ ~飽和潜水~

作者 高栖匡躬

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★★★ Excellent!!!

「Ⅰ」「Ⅱ」通してのレビューになります。

現代のワシントン郊外にミサイルが着弾。それはなんと大戦中のドイツV2であって、発射したのは旧日本軍の巨大潜水艦伊400型とわかる――という衝撃的なイントロ。すわ派手なミリタリーアクションかサスペンスミステリ開幕かと思うと、これが違う。金融小説っぽくて、ちょっと驚きます。

特に「Ⅰ」はその色が濃い。撃ち込まれた米国が反撃に出ずに延々会議ばかりしているし、主人公のダイバーは前半は本筋に絡まないしで、展開が遅く感じられます。

「Ⅱ」に入ると物語が加速し、Ⅰで張られた伏線回収もあり冒険小説の色合いが強くなります。取材調査を背景にした設定の見事さという本作の美点は、「Ⅱ」に強く感じられるでしょう。「Ⅱ」後半はなかなか怒涛の展開で、オチも見事な伏線回収。カクヨムにはなかなかない「大人のエンタメ」なので、応援したい気分です。


また読了してみると、なんとなく懐かしい感覚。昔読んだ翻訳国際冒険小説の味わいが、そこはかとなく漂っているというか……。

現代のアクションものでは、ネットやデジタル技術を反映させたプロットから逃れられません。それに対し、本作にはそうした色が極小であるからかもしれません。まったりした速度感もあり、現代的で手に汗握るというより、クラシックとして寛いで読める――そうした小説を求める方に向いているでしょう。

★★★ Excellent!!!

個人的に最近、人間魚雷についての作品を読んだ後でしたのでタイムリーな話でした。
人間魚雷は、「日本軍の現状を打破する物だ」と、当時の潜水学校の生徒達は日本の未来を救う為に喜んで乗ろうとしていたらしいのですが、人間魚雷を作った技術者は、脱出装備が無く乗員が必ず死ぬ兵器を造ることを皆、嫌がったとのことです。普通、逆だと思われますが、時代背景や潜水学校の生徒達、技術者の思いを慮ると、やるせない気持ちになります・・・。
本作は、「国家とは何であるか」と言う考えや定義について、そして今や限界を迎えていると思われる「資本主義経済の打開点」などを鋭く突き、宇宙の様に神秘的な「海へのロマン」と、上記の様な「兵器へのロマン」を交え、エンターテインメントに描いている作品です。
ドキドキワクワクしたい方は勿論、上記の人間魚雷などの兵器について思う所のある方、昨今の経済について疑問がある、又は「経済なんてよくわからない」という方なども納得のいく作品だと思います。
何やかや言いましたが、難しい事を考えず、兎に角読んでみれば、私の様に先が気になって、夢中になってページ(ブラウザ?)をめくる事になるでしょう。