よん

わたしときみとはいいろの病室生活はあと少しになった。

今は婚約者になった彼が微笑みかけてくれる。

ただ。彼は近くなった距離はおおきいのに手を出すどころかいつも通り。

だと思っていたけど君が少し照れくさそうに笑うことが多くなったと思う。


「結婚は、いつしようか。」


「2人とも退院してからでしょ。

おとうさん厳しいから許してくれるかな?」


「精一杯、頑張るよ!」


からかったつもりが逆に火をつけてしまったみたいだ。私の退院まであと4日。

退院した次の日にまた会いに来る約束をしてる。退院した日に機種変更をして、連絡先を交換しよう。と約束していたから。


彼の病名は知らなかったけど治るだろう。と思っていた。


そんな次の日の朝。


朝起きると彼のベッドには誰もいなかった。

トイレにでも行ってるんだろ。と思っているとなかなか帰ってこない彼。


少し心配になった私は廊下を歩いていたナースさんを捕まえ、


「私と同じ部屋の彼はどこですか?」


「あぁ、彼はね、残念だったわね。

余命より5ヶ月も長く生きてたみたいよ。

あの子は小さい頃から大腸がんを患っていて摘出して退院して、再発してまた入院を繰り返してたみたいね。最期は肺気腫が肥大して呼吸困難で亡くなったみたいよ。」


うそだ。亡くなった?彼が?どこかにいるはずだ。滲むはいいろの中をひたすら走った。

どこかにいるんだ。この病院のどこかにいるはず。

どこかで隠れて私をおどかそうとしてるんだ。

だって彼は私と結婚するんだもん。

私の実家へ挨拶にくるんだよ?居なくなんてならないんだ。

私は人にぶつかり、転びながら病室までかけ戻った。


「どうしたの?おめめ真っ赤だよ?」


そういって笑いかけてくれる彼がいた。


「どこ行ってたのよ!」


と駆け寄るとそこには1本の白い花と君の青いガラケーがあった。


「窓から海が見えるんだ。結構綺麗なんだよ。」


窓辺に腰掛けて笑う彼。

朝日が反射してキラキラした深い海と黄色い砂浜が見えた。

あまりにも綺麗な景色。

君と2人で見るはずだった景色。

窓辺で黄色いガーベラが揺れていた。


「黄色は、(究極美)らしいよ。」


一緒に浜辺に行こうと約束した彼はもういない。

カラフルに色付いた世界にぽっかり「はいいろ」の私。

君と共に同じ景色は見れなかった。

私の視界は揺れている。

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はいいろ 漣_ren @ren_sazanami

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