はいいろ

漣_ren

いち

目を覚ますと身体が痛かった。


「イテテ…」


なんでこんなに身体が痛いのかわからない。

私は友達と映画を見に来ていたはず。

そうだ。友達と映画の感想を話すのに夢中だったんだ。


「私、車に轢かれたんだ。」


フフッと笑う声が聞こえ、起き上がると真っ白な病室と「はいいろ」のおとこのこ。


「そんなに僕の顔みてどうしたの?なにかついてる?」


不思議そうな男の子だったけど言わせてもらえば不思議なのはこっちの方。


「なんでそんなに灰色なの?なんの病気?」


「え、僕そんなに顔色悪いかな?最近はそんなに状態悪くないんだけどなあ。」


「えっ!?じゃあなんでそんなに灰色なの?」


辺りを見渡すとやはりみんな灰色で、もうわけがわからなかった。

白い服をきたこれまたはいいろな男の人が部屋に入ってくる。


「大丈夫ですか?」


「いやっ!触らないで!なんでみんな灰色なのよ!」


「!?…もしかして、これも灰色ですか?」


おそるおそる首を縦に振った。


「頭を強く打ったみたいだから、色が認識できなくなったんだね。

大丈夫だよ。ここは地球で病院の中だから。」


頭がごちゃごちゃで泣きわめく私をなだめて、お医者さんは病室を後にした。


「大丈夫?お目目腫れてるよ?」


「見ないでよっ!」


恥ずかしくて布団に潜り込んでしまった。


「ごめんって。

まあ、この病室には僕と君しかいないんだし、仲良くしよう?

…あの、僕で良かったら君の目になることって出来る?」


「私の目に…?」


「そう。君の目に。急すぎたかな?…えへへ」


「そんなことないけど…。

いつか、私にもまた色が見えるようになるかな?」


「まってね、今調べてるから。」


ちらっと覗くと灰色の病室の中でなれてなさそうにぽちぽちガラケーを打つ男の子がいた。


「どう?」


「色盲、っていうらしいね。

なにかおおきなきっかけがあるとまた見えるようになるかもしれないってネットに書いてあるよ。」


「おおきなきっかけ。」


「こんなに小さい病室じゃ難しいか。

でも僕が驚いたこととかで君も驚いたら戻ったりするかもね。」


「たとえば?」


「ここ、結構景色いいんだよ。

ほら、この窓から海が見えるんだ。

水平線まで見えるんだよ。

いつもここの景色をながめてるんだ。」


窓から外を見る彼は私より大人っぽかった。

でも窓の枠の中には暗めのはいいろと薄いはいいろがあるだけだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る