さん

それからもいろんな色を教えてもらった。

そのなかでも花の色を教えてもらうのが好きでお見舞いで貰った花の色を教えてもらう。


「この花は?オレンジ?黄色?」


「黄色とオレンジだね!この花はガーベラって言うらしいよ!」


不慣れなガラケーをぽちぽちしだす彼。

私のスマホは事故の時に粉々になったらしく家族が持って帰ったらしい。


「んと、オレンジのガーベラ の花言葉は(我慢強さ)黄色は、(究極美 親しみやすさ)だって。」


「綺麗な花言葉だね。きっとお花屋さんに愛されてる花なんだろうなあ。」


こうやっていつも花の色を聞くと花の名前と花言葉を教えてくれる。

そうだ。君がいるからスマホが無くても退屈せずに過ごせるんだ。


そんな彼を見つめていると彼も携帯をパタン、と閉じてこちらを見る。

不思議そうに笑いかけてくれる。


「ありがとう」


と小声でつぶやく。


「どういたしまして。」


聞こえないように言ったつもりの言葉が届いていたことにびっくりし、首から上が沸騰したように熱くなった。


どうしたの?と顔を覗く君。


なんでもないよ。なんでもないから。

あと1週間だけだもん。退院まで。

退院したらもう会えないから。

気持ちは心の宝箱にしまっておくことにしよう。

そう思いながら君に


「なんでもないよ。」


と告げる。

君はなんだかいつもよりそわそわしているけど、いつもそわそわしてるっけ。


ちょうど夕日が水平線に落ちていく頃。

すこしもじもじした彼が私のベッドの横に座った。


「どうしたの?トイレ?」


「ううん。違くて。

えっとー、あのー。」


もごもご話す彼。目線がゆらゆらと泳いでる。

図体は私より大きいのに。


「んー?なに?」


「えっと、はい!これ!」


頭にふわっと天使の輪っかがかかる。


「シロツメグサ?」


「そう!頑張って作ったんだ!」


「うれしい!ありがとう!」


「…あと!僕と結婚してください!」


私は理解出来なかった。けど。

うれしかった。とても。

照れながら。君へ。


「付き合ってもないのに結婚?」


「だって僕考えたんだ。1ヶ月とちょっとだけど君といて、あと1週間しかこの病室にいない君とどうしたら一緒にいられるのか。」


「私、はいいろしか見えないけどいいの?」


「いいよ。ぼ、僕は君が好きだから。」


夕日と君の頬が赤いような気がした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る