重厚かつ幅広い表現力と、シニカルで若者風の言い回しの落差が面白い

丁寧に作りこまれた世界観――乱世を終えた人々の思想と生き方の変遷――と、一人称であろうと硬派な文章回し。腰を据えて読もうと思い身構えた私だったが、見事に不意打ちを食らった気分となった。

なんだこれ(困惑)
それが投稿分(2017/12/14)前半部の毎章ごとに抱いた、素直な気持ちである。

間断なく荒唐無稽な怒涛の展開が続き、私は終始にやけた笑みが止まらなかった。紛うことなく良質なコメディであり、するすると読むのが進む。
しかし、上述したように重厚な世界設定により、ただの喜劇で終わるわけではない。この世界に住む者たちは皆、急激に変化しつつある暮らしに順応し、生き抜くために必死なのである。それは、ここ数十年で科学技術の躍進により翻弄され続ける我々に重ねることもできるだろう。そんなリアリティが本作にはあり、見所にもなっている。

また、どのキャラクターたちも魅力的である。勇者でありながら、その権威が零落した世の中で壺漁りに勤しむ無職。一見横暴でありながら、社会と折り合いをつけ誰よりも騎士道を重んじる無職。盲目的なドルヲタ(真理)と内容に著しく触れずに書き出すのが難しい個性ある者たちばかりだ。そんな一癖も二癖もある者たちが紡ぎ出す物語は、日常的であって極めて非現実な世界となり、読む者を引き込んでしまう。

長々と書いてしまったが、それだけの内容が本作には詰まっている。
一度読んでしまえば、続きが気になってしまう作品だ。

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