起承転結でいうところの、転の落差が凄まじい作品です。何気ない日常生活で、ほっこりさせられたと思ったら唐突に戦闘シーンで絶望のどん底に叩き落とされる!という高低差がとても巧みに表現されていて、読んでいて思わず声をあげてしまいそうになりました。
また、設定もかなり独特な雰囲気を醸し出していて、非常に好奇心をかきたてられます。特に、現代技術と日本の文化を混ぜ合わせて錬金合体したかのような世界観には度肝を抜かれました。作者様の発想には脱帽です。
登場人物も、ただ戦闘を盛り上げるためだけに出てくるのではなく、それぞれの感情が細やかに描かれているため、行動に説得力があります。このため、なんでこういったことをする必要があるんだろう?といったweb小説にありがちなご都合展開が全くなく、安心して読み進めることができました。
既に相当のレビューがありますが、それも納得の傑作だと思います。是非、いろんな人に読んでいただきたいです!
とにかくギャグパートとシリアスパートの落差が凄い。
が、本来はシリアスなダーク・ファンタジーであるようだ。
ダーク・ファンタジーだからといって、魔王や悪魔が出てくるわけではない。前面に押し出されて本作を秀逸なダーク・ファンタジーと為さしめている要素は、人間の暗黒面。
この作品のアイデンティティーたる人の暗黒面は、やがてストーリーを侵食し、設定を蝕み、あまつさえキャラクターを、さらには読者、作者までをその闇に取り込んでしまう。
本来書き手が、物語やそのキャラクターの狂気に中(あ)てられることは、駄目な創作の例となるはず。だが、本作は作品からバックファイヤーしてきた暗黒が作者の中に宿り、さらなる暗黒を生み出し、得も言われぬ漆黒の余韻を残している。
文体から察するに、あまり多数の作品を書いた作者ではないであろうと推察するが、本作を生み出したものが、計算された狂気であれ、未成熟な書き手によるビギナーズラックであれ、産み落とされた作品の出来には関係のないこと。
本作は、滅多に出会うこと叶わない、禁断禁忌の怪作である。
これはもはやバトルではない。かなりヘビーな「戦争」である。ここまで主人公を過酷な状況に追い込んだ作品は、今まで見たことがない。
ほんのわずかな時間だけ、主人公は貧乏神社の巫女として、また女子高生として、平凡な日常を過ごすが、それはすぐに暗転してしまう。
クラスメイトの美少女によって、父は殺され、ばらされる。それと同時に母親はある掟に刃向い、主人公を連れて逃げたために命を落としていたことが判明する。そして、主人公は特異な血を持つ男だからという理由で、冷酷非道な最強最悪美女と交わることを強要される。その前に、その美女から「地獄」での戦闘を命じられ、クラスメイトと共に「地獄」の使者と命を懸けて戦うことになる。命からがら助かったものの、父を殺した美少女は自分の体は改造されていることを主人公に告白し、主人公の目の前で自殺してしまう。美少女を助けるために主人公は自ら「地獄」行きを決めるが、そこには罠と絶望的状況が待っていた。それでも主人公は、美少女を何とか生き返らせることに成功する。ここまでで一区切りだ。
次からは高校生活が再び描かれているが、序盤に不吉な機密文書の記述から始まっているため、気が抜けない。
この最悪な状況からどのような希望が見いだせるのか。それとも?
これからの展開が楽しみな作品です。
是非、ご一読ください。
重厚な本格派・バトルSF。
その仔細な表現により没頭、気付けば誰もが銃を構え、戦場へ降りたつことだろう。
本作品、設定が非常に練り込まれており複雑かつ魅力的。であるにもかかわらず、その意味は、すっと自然に頭へ叩き込まれている。
この魔法を可能にした仔細で優しい文体。きっと何度も推敲を重ねられて生み出されたものなのだろう。
恐怖感と、その中で戦い、すり減らされる心。
そんな中だからこそ大切にしたい、仲間への想い。
その交錯が実に巧みに絡み合い。
そして心の成長へと昇華する。
ウェポンとライフ。ハイブリッドなサプライを、あなたならどんな配分で割り振るのか。
文字通り魂を削り戦う、本格派ダークファンタジー。
是非ともこの世界を皆様に堪能していただきたい……!
巫女というと、祈りを捧げるような、
儚い女性を思い描きがちです。
けれど、SFのような機械的要素、
バトルドレスの名に相応しい、
巫女の戦いが、
想像を覆します。
巫女から思い浮かべるありふれた印象と
全く違う、斬新な物語を感じます。
使者の存在、巫女の戦う、
舞台、
描写が素晴らしく、
美しく、切れの良い文と、
人物のセリフが、
一言であっても、魅力的に響きます。
父から結衣への言葉。
ただ戦いを描くだけでなく、
背景に描かれる人物像は、深みを持っています。
九十九さんとのやり取りから爆笑です*
鈴の人柄も面白い*
楽しいキャラクターたちの会話に*
緻密な巫女の世界の描写。
明るい場面と、舞台や家族、
巫女の信実・・* 恐ろしさ。
奥行きを持って物語が伝わります。
巫女になる運命。
結衣の背負う運命は、想像以上に重たいものです。
過酷な運命の中に生きる人物たち。
今を受け入れて、乗り越えてゆく。
自らの意思で、
取り戻す、戦いの幕開け。
私でいられる場所*
掴み取る戦いに、涙します。
全ては運命なのか・・* まるで、プロットの上を生きる物語の
人物の気持ちの様です。
それは、また、わたしたち人間の人生も
同じでしょうか。
読む前の俺
あれ? ダークファンタジーなのに、『暴力描写』や『残酷描写』なし……? ダークファンタジーってベルセルクみたいなもののイメージだけど、それ無しでダークファンタジーなんて書けるの……?(カチカチ)
ある程度読み進めた俺
確かに嘘はついてない……嘘は! 戦闘シーンはあるけど! 内臓が出てくるとか、相手をいたぶりつくすとか……それはない! でもこれは……! その制約がある中で何でこんなむごく作れるんだ……! 詳しくは見てほしいけど、ダークファンタジーの名に偽りなし! 見事だ!
驚きました。
この作品、先にあげた通り『暴力描写』や『残酷描写』の指定がありません。では生ぬるい内容なのか、それには即NOと答えられるくらい、この作品はヘビー級のダークファンタジーで満ち溢れています。恐怖におののく姿、不気味な敵、ドライなまでの命のやり取り。創作には無限の方法があることを教えてくれる作品であると言えます。
紐房結衣は、神凪の才能に秀でた『男の子』
宗教国家『大和国』最大の稼ぎ口、世の女性誰もが憧れる『巫女』になるため――神学専門の女学校へ進学した彼に、最初の悲劇が訪れる。
そのあまりの落差に、度肝を抜かれた作品かもしれません。
とても破廉恥な始まり方、女装男子モノのドキドキ感、いったい何が始まるんだろう――そう思った矢先、ボディブローを食らった気分になりました。そこからでした。その衝撃的な展開に、不思議な世界感に引き込まれていったのは。
そこまで走ってしまえば、続きがとても気になる作品になります。
特にダークファンタジーを好む人であれば、是非ご一読頂ければ。