禁断禁忌の怪作

 とにかくギャグパートとシリアスパートの落差が凄い。

 が、本来はシリアスなダーク・ファンタジーであるようだ。

 ダーク・ファンタジーだからといって、魔王や悪魔が出てくるわけではない。前面に押し出されて本作を秀逸なダーク・ファンタジーと為さしめている要素は、人間の暗黒面。

 この作品のアイデンティティーたる人の暗黒面は、やがてストーリーを侵食し、設定を蝕み、あまつさえキャラクターを、さらには読者、作者までをその闇に取り込んでしまう。

 本来書き手が、物語やそのキャラクターの狂気に中(あ)てられることは、駄目な創作の例となるはず。だが、本作は作品からバックファイヤーしてきた暗黒が作者の中に宿り、さらなる暗黒を生み出し、得も言われぬ漆黒の余韻を残している。

 文体から察するに、あまり多数の作品を書いた作者ではないであろうと推察するが、本作を生み出したものが、計算された狂気であれ、未成熟な書き手によるビギナーズラックであれ、産み落とされた作品の出来には関係のないこと。

 本作は、滅多に出会うこと叶わない、禁断禁忌の怪作である。

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