禁断禁忌の怪作
- ★★★ Excellent!!!
とにかくギャグパートとシリアスパートの落差が凄い。
が、本来はシリアスなダーク・ファンタジーであるようだ。
ダーク・ファンタジーだからといって、魔王や悪魔が出てくるわけではない。前面に押し出されて本作を秀逸なダーク・ファンタジーと為さしめている要素は、人間の暗黒面。
この作品のアイデンティティーたる人の暗黒面は、やがてストーリーを侵食し、設定を蝕み、あまつさえキャラクターを、さらには読者、作者までをその闇に取り込んでしまう。
本来書き手が、物語やそのキャラクターの狂気に中(あ)てられることは、駄目な創作の例となるはず。だが、本作は作品からバックファイヤーしてきた暗黒が作者の中に宿り、さらなる暗黒を生み出し、得も言われぬ漆黒の余韻を残している。
文体から察するに、あまり多数の作品を書いた作者ではないであろうと推察するが、本作を生み出したものが、計算された狂気であれ、未成熟な書き手によるビギナーズラックであれ、産み落とされた作品の出来には関係のないこと。
本作は、滅多に出会うこと叶わない、禁断禁忌の怪作である。