過去
「10年間どんな事を思って暮らしていたのかい?」
「この日をずっと待っていました」
「私も」
「10年前は二人共こんなに小さかった。なのに今では私の首元ほどまで成長した。まあ乙木はお腹のところまでくらいしかないがね」
「別にそこまで小さくない!」
もう10年になる。
この少年と約束をしたのは。
あれが初めての反抗だったなそういえば。
「すまない、乙木席を外してくれるか」
「ん…」
父の神妙な顔つきを見てわかったという顔をして乙木は部屋を出ていく。
「いやまさか本当に戻ってくるとはな」
「お父さんのおかげです。あの時お父さんが適当に流したりしていたらこう放っていなかったと思います」
「乙木が『私、ようすけについていく』と言った時は本当に驚いたよ。今まで反抗なんてしたことがなかったからね」
「僕こそ驚きましたよ。『なら10年後戻って来い。10年後もそう思えたならば娘をやろう』って…」
男二人で昔話に花を咲かせているとふと思い出す。
「そういえばコック長は…」
「4年前に亡くなったよ」
やっぱりそうだったか。
「私は大馬鹿だった。なんで気づいてやれなかったのか」
◇◇◇◇◇◇◇
扉をあけるとそこには人影があった。
書斎に入った僕らはその中で大男と出会った。
扉が空くのに気づいてその大男は窓の外にいっていた目線を僕たちに合わせる。
「乙木!?」
書斎に入った途端にその大男は乙木に抱きついて涙を流した。
「君が乙木を連れ帰ってくれたのかい?」
「え…」
目に涙を浮かべながら大男は僕も巻き込んで
「ありがとう…ありがとう…」
と僕と乙木をしばらく抱きしめていた。
その図体と似合わない泣き虫っぷりを披露しながら。
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