主人
「おそらくさっきの人は階段を下りてないだろうからあっちの部屋だと思う」
「なんで?」
「多分だけどこの階段は絨毯だからほとんど足音はしない。けど足音が割と遠くに行くまで響いていたからおそらく階段は降りてないよ」
そして書斎の反対側までやってきた。
その部屋の扉には『主人以外の入室を禁止する』と書いてあった。
主人ってことはおそらくこの洋館の持ち主だということだと思う。
ってことはもしかしたら乙木の家族か、関係者かもしれない。
「本当に入って大丈夫かな…」
「入らないとなにもわからないよ?洋介帰り道どうせわかんないんでしょ」
その通りだ。
せめて乙木の知り合いじゃなかったとしても、だからどうということはない。それこそ道を聞いて大人しく帰ればいいだけのことなんだから。
僕はノブに手をかけた。
そして扉をゆっくりと開いた。
◇◇◇◇◇◇◇
「失礼します」
「来たかね…10年ぶりかな」
そこには2メートル近い大男が窓の外を眺めていた。
彼は、篠宮
この幽月邸の主人にして篠宮乙木の父親。
そして10年前この男と僕はあっている。
そして二つ目の約束の相手だ。
「乙木は席を外してくれるかい?」
「なんで?私だって聞く権利はあるはずよ?」
「仕方ない、なら途中までは聞いてもらっても構わない」
「はーい…」
途中までというのが気に食わなかったらしく少し不機嫌な様子。
「それで…どうだった?」
「変わりません」
10年経ったって…乙木が一日で記憶を失ってしまったって関係ない。
「娘さんを…僕にください」
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