住人
僕の緊張はピークを迎えていた。
いつかはこの時がやってくることはわかっていたが、それでもやはり緊張というのはどうしてもしてしまうものだ。
「緊張してるの…?」
「うん、正直ここまで緊張するとは思っていなかった」
「大丈夫…」
乙木は僕の手を取って言ってくれた。
やっぱりなんだかんだ言って慰めれてばかりな気がする。
ここくらいは度胸見せなきゃな。
「よし、行こうか」
僕はその『主人の部屋』の扉を叩いた…。
◇◇◇◇◇◇◇
扉を揺らす音は30秒ほでやんだ。
その後30秒間ほどは全くの静寂だった。
最初にしたのは足音。
その足音は少しづつ音を小さくしながら書斎から遠のいていった。
「ふう…大丈夫みたいだよ」
「…あの///」
「あ、ごめん!」
乙木を安心させるのに必死でいつの間にか抱きしめる形になっていたらしい。
急になんだか恥ずかしくなって急いで離れる。
顔を合わせるのも恥ずかしくてなんか喋りづらい…
「……」
「……」
「ね、さっきの…」
「いや、あれはそのなんか口が滑ったというか!」
「そうじゃなくて、さっきの誰だったのかな?」
軽く誤爆してしまった。
「えー…んー住人の人なんじゃないかな?」
「会いに行ってみない?」
「え!?」
「そもそも私のうちなんだから見つかっても怒られるくらいだろうし、もしそうじゃなくても『迷い込んでしまった』ってちゃんと説明すればわかってくれるはずだよ」
確かに一理ある。
普通の人なら子供をこんな夜中に外に追い出すような人はいないはず。
それにもしかしたら本当に乙木の家族の人がいるのかもしれない。
「うん、行ってみようか…」
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