日誌
「おしゃべりな本棚に、開かずの書斎って…今見てもひどい書き方だなこれ」
僕と乙木は書斎に置いてあった日誌を見ていた。
その日誌には『司書日記』と書いてあった。
おそらく司書をやっていた人物の日記なのであろう。
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3月1日
またうるさい首切り婆さんがやってきた。
こっちは落ち着いて本を読みたいのにさ。
毎日のように怒鳴り散らしやがって。
自分こそ、その時間があったら仕事しろってんだ。
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3月5日
今日も婆さんが来たが書斎の鍵は閉めておいたから大丈夫だった。
どうやらいつも3時くらいにやってきている。
その時間だけ鍵を閉めておけばいいだろう。
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3月12日
今日は珍しくご主人がやってきた。
どうやら何か本を探していたらしいが…
そういえばご主人おかしなこと言ってたな。
どうも昨日の夜にも書斎に来たが扉が閉まっていて入れなかったらしい。
おかしいな、昨日は開放したままにしていたはずなんだけど。
まあ昨日の夜はバタバタしてたし、もしかしたらただの勘違いかもな。
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相変わらずコック長はひどい言われようだな…
「ねね、首切りコック長って誰のこと?」
「ここのコック長さんのことだよ、朝合わなかったの?」
「朝ご飯は私が作ってるから知らないよ?」
「え…」
おかしい。
ここの幽月邸の料理はすべてコック長の仕事だ。
自分に他人に厳しく、仕事には真摯に向き合って妥協を許さないコック長が乙木に朝食をまかせるなんてことありえるだろうか。
◇◇◇◇◇◇◇
『首切り』そんなワードを聞いたことはホラー映画くらいしかなかった。
「いま、あの人たち何か言ってたね…コックさんがなんとかって…」
幸いにも乙木には聞こえてなかったらしい。
乙木を混乱させるわけにもいかないのでここは自分も聞こえなかったとごまかす。
とりあえず中には入れはしたが下手に見つかっても困る。
なんせ本当にこの家が乙木の家かどうか確証もないんだから。
それにさっきのコック長の噂も気になるし…。
「とりあえず…ちょっとだけ探索してみる?」
「なんで、ここ私のうちなのに」
それはその…
「そう、夜遅くに出歩いてるのがバレたら乙木も大変だろ?だからこっそり寝室に入って休もうよ。朝になったら僕もそっと帰るからさ」
「ん…それもそうだね、寝室ってどこだっけ」
もうすでに自分の寝室すらわかってないってそれ…
とりあえず僕らはキッチンらしき場所を出る。
キッチンを出るとそこはエントランスホールのようになっていた。さっきまでしていた声の主ももうどこかへ行ってしまったようだ。
エントランスホールには大きな中央階段があった。
赤く大きな絨毯が敷かれたその階段はまさにテレビで見た洋館そのものだった。
その階段を上った先では今まさに動きだしそうな西洋の鎧が2体鎮座しており、僕らを睨みつけていた。
2階にはどうやら部屋は2つしかないらしい。
先に僕らは右側の廊下を歩いて部屋の前に立つ。
『書斎』と書いてある。
書斎という言葉はよくわからなかったけどのぞいてみると本棚がたくさんある部屋でどうやら図書館らしき部屋のことらしい。
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