本物の闘争がここにはある!

闘争とはなにか。個人と個人の争い、階級闘争、民族紛争、国家間の争い、宗教戦争──およそ人が二人以上存在する時、そこには利害の衝突が生じ、人の相克が生み出される。それは人の持つ多様性の必然的な帰結であり、人の歴史とはいわば闘争の歴史なのだと言える。

そしてその闘争のもっともプリミティブにして純粋な様式。それこそが『じゃんけん』なのである。

この物語は闘争の物語である。

じゃんけんという純粋闘争様式を軸として、異能、知謀、単純暴力、達人技、兵器、そして欲望。ありとあらゆる手段を駆使し、超人たちが相争う。

それが面白くないわけがない。面白いに決まっている。実際、この物語は破格の面白さなのである。

そして──。

その闘争の果てに、人は傷つき、愛すべき人々を失い、そして苦しむ。そこからの救いは果たしてあるのか。人はそれを超克できるのか。それが、この物語の裏のテーマでもある。娯楽として最上でありながら、それに留まろうとしない。作者の志の高さを感じさせる。

もし『闘争』という言葉が少しでもあなたの心の琴線に触れるのであれば。あなたが今読むべきマストの作品、それがこの『鏖都アギュギテムの紅昏』なのだ。

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