よく設定が練られており、異能力者達が使う能力の活かし方も面白い。
異能力者が能力を使う時の描写が凝っていて、バトルシーンも読み応えがある。
極度のお人好しでお節介焼きの主人公、主人公に世話を焼かれていた掴み所がない先輩、主人公の世話を焼く性格に難が有る女上司、ホストなのに嘘を吐くのが下手な主人公の友人など、出てくるキャラクターも魅力的だ。
この作品に出てくる異能力者は“ロレム・イプサム”と呼ばれ、そのロレム・イプサム達が使う超能力は代数能力(アルゼブラ)と呼ばれる。
代数能力(アルゼブラ)は、能力が発現した人間の行き場のない深く強い欲望が元となっている。
「人生のかたちが決まっちゃった気がする」この作品の主人公である有動航が作中で言った言葉である。
確かに選択肢として他の生き方も有った。それでも今の生き方以外を選ぶ事がとても難しかった。
この作品に出てくるロレム・イプサム達は、きっとそういう人達ばかりだ。
その中でも、主人公の有動航の自己犠牲的な在り方は、彼自身が「自動的」という言葉を用いるぐらい自分に対して強迫的だ。
そんな不自由な人達も、夜の闇の中ではほんの少しだけ自由になれる。
与えられた自由をどう使うかという事は、自分の奥に有る欲望とどう向き合うかという事でもある。