幼馴染の魅力、再確認。

『マイペース系幼馴染 2』までを読んでのレビューである。
(一応、ネタバレの警告を)

自分のなかの幼馴染ヒロインといえば、「萩山葵『ロウきゅーぶ!』」「櫛川鳩子『異能バトルは日常系のなかで』」
表面的なところはお互いに知っているし、変なところで気が合う。しかし、いざ「本心は?」となると尻込みしてしまう。
読者からすると、特有のもどかしさもあれば、本音でぶつかり合っても大丈夫だろうという信頼感もある関係。
また、近すぎる距離のために、アプローチが過激になり過ぎて滑稽になることもある。
そういうイメージが、自分のなかの「幼馴染」像である。

こういった視点から考えると、作者が「幼馴染」を理解し、魅力を持たせようと思考するところが、良く伝わって来る。

例えば、お互いがお互いに振り回される安心感のある関係。
からかいと冗談から窺える距離感。

その一方で、「近すぎて縮められない距離」が仇となり、もどかしく感じられるさまも充分に伝わって来る。
遊園地行きをグイグイ勧めてくるくせに、その理由を「……一緒に、居たいから」なんてためらいがちに言う。
なんと可愛らしく憎い台詞。

作者が他にどのようなレパートリーを持ち、どのような話を展開させて来るかが楽しみだ。

改善点を上げるとすれば(紙媒体を前提とした助言なので、筋違いかもしれない)、単純に描写(字数)を増やす、つまり、肉付けを頑張るだけで、「幼馴染」たちが生き生きとしてくるだろう。
先ほど台詞がある寝起きの場面では、「幼馴染が一瞬目を逸らした」など感情を仄めかす仕草を入れるとか、
お化け屋敷の場面では、身体の感触について比喩を追加したり、洗髪剤の香りがしたり、とか。
もう少し、キャラクターを動的に動かすと吉ではないか。
それらがありふれたものであったとしても、作者自身の手を通して書かれれば、新しい魅力となると思う。

まだ話数が少なく、仔細な評価は難しい。
しかし、今後の作者が描く「幼馴染」たちに期待の持てそうな作品であるのは間違いない。
あなたが興味を持ったならば、ぜひ読んでみて欲しい。