血生臭い事件と愛らしいブラコンの交錯

この小説はドロドロとした人間関係を甘いブラコン女子高生の視点で描かれており(違うこともあるがかなり感情的な人物であることに変わりはない)、そのギャップが魅力の一つであると思う。
また自宅にいる兄とは関わりなく表向きには事件が終わり、兄の心理学による見立てが始まるという構成も読んでいて面白いと思った。

そして何より良いと思ったのはこの小説がミステリでありアンチミステリである一番の要素として、兄の見立てこそ述べられあたかもそれが真実かのように思ってしまった頃に、兄が再度思考実験に過ぎないことを告げることだ。
つまりは一応の解決を見せた事件に別の解を与えた上で真相が謎のまま終わるのである。

無論主人公たる妹の愛らしさも大きな魅力ではあるが、私はこの決して真相を読者に伝えずに終わるスタイルを一番良い要素としてあげたいと思う。

もし未読でこのレビューを見てしまった方には少々ネタバレ気味になってしまって申し訳ないが、1幕だけでも読んでみてその魅力を味わってみて欲しい。

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