本作品の一番の魅力は、このレビューのタイトル通り世界観だと私は思います。
日曜9時の魔法少女世界ほど甘くはなく、深夜放送の魔法少女世界ほど重々しくもなく、上手く魔法少女という存在に理屈を与えられているように感じられました。
この世界観の物語だという時点で私はまず好きになるのですが、世界観の魅せ方についても実に良いと思いました。
ベースが現実世界であり主人公の一人称視点の小説のため、始めにざっくり説明してしまうのではなく、読んでいるうちに登場人物たちが当たり前に受け入れている魔法少女の存在など様々な常識が自然と理解出来ました。
それから登場人物たちについても言わせていただきますと、やや業の深いキャラクターが多く(というかメインキャラはほとんどでしょうか)、いずれも世界観にマッチしていました。
勿論この小説のタイトルである、魔法少女な男性も実に良いキャラクターだと思います。
最後に恥ずかしながら申し上げますと、私は女性主人公視点というのが少々苦手です。
中身がどうこうというより、単純な好みの問題なので作品の評価とは関係はないのですが…それでも本作は難なく読むことが出来ました。
それどころかメインキャラの男性を少し可愛いようにすら思えてしまったほどでした。
その要因はおそらく真っ直ぐな主人公の気質によるモノだと思われます。
もしこの小説を読むか迷っていて、本レビューを見ていただけた方がいらっしゃいましたら、女性視点の苦手な方(おそらく主に男性)であっても、まず一読していただきたいです。
長々と書かせていただきましたが、是非とも読んでいただければ幸いです。
タイトルで出落ちかと思いきや、とんでもない!
もし憧れの魔法少女が実は男だったら? そんな問いに正面から向き合う、だからこういうタイトルなのだ。
ひたむきな主人公を取り巻く世界は優しく、希望に満ちていて、魔法少女という言葉が持つ淡い空気がそのまま作品全体に込められているようです。読んでいるこちらの心も解れるような、少女の夢の物語にふさわしい柔らかさ。
と同時にエンターテイメントとしても面白く、軽妙な掛け合いや主人公ちゃんの暴走芸に笑わされることもしばしば。これからの彼女らが送る日々を読者として追い続けられたら、それはもうずっと退屈しないだろうと思います。