The Birthdayは「夜明けのホラーが好きさ 救われたような気がして その後見る夢がどんな ひどいものだったとしても」と歌ったが、そういう意味では日曜の深夜(あるいは月曜の早朝)にはうってつけと言える。
暗い、いわゆるところの怪奇小説であり、SFというよりはホラー色が強いような気もするが、内容の質の高さは凄い。恐怖を単に「怖い」「気持ち悪い」だけで済ますではなく、なんというか、絵画的に示しており、そこに美しさまで発生している(と俺は感じる)のはお見事。
ただなんというか、俺が知る限りのブラッドベリはもうちょっと幻想的なまさに「怪奇」を描いているイメージで、目指すのはブラッドベリ、であっても猿の偶然によって(言い忘れていたが、タイトルもいかしている)成立したものがこれである、ということであろうから別に問題はないのだけれど、ブラッドベリをイメージして読むとちょっとその具体性と現実性には打ちのめされるかもしれない。
単に俺のブラッドベリ観が偏っているのかもしれないし、もちろんそのことがこの作品の価値を毀損するものではないことは申し添えておきたい。
追記:めちゃくちゃどうでもいいことだが、「ショートショートの花束」今6巻まで手元にあるのだが、7、8巻は未読であったので、遅くとも今月中にはどこかで入手したいところである。
最近の若い人に、果たしてシュールなキレ味のことをレイ・ブラッドベリと表現して伝わるのだろうか。かくいう私も映像関係でしかその名前を意識したことはないのだけれど……。
近況ノートの着眼点を読むまでもなく、『限界世界』で想起されるのは巷をにぎわせるあの人間味溢れるチャーミングな男性です。
ゆえに、読む人が読めば怒りだすような論旨や設定が展開されていくのですが、その怒りすら踏み台にして「そんな程度のこと」と切り捨て、さらに人間社会の深いところまでぶっこんで行く様はシュールで穿った視点の賜物です。
……まあ、設定自体はなんというか、オープニングシーンからセックスするようなエロ漫画やエロゲーで良く見られるものなんですが。
ただ個人的に、暗さを照らし出した上で糾弾するに留まるよりは、その理屈の上でなんらかのアクション・リアクションが欲しいかなとは思いました。短編(ショートショート?)で収まりきらない可能性はありますが、もう少しアクションで表現してくれるとのめり込めるような気がします。ニヒルな視点で見つめるだけでは、やはり物語にはなりえないのではないか。見つめるだけ、毒を吐くだけの人間は、物語を見るまでもなく実社会にいくらでもいてしまいますから。
否定的な言葉を並べてしまいましたが私はこういうのが好きです。濁らない瞳で描かれる黒い部分は貴重な才能ですので、是非ご一読をとお勧めの一品です。
4/12 追記
やらかしてきたなぁ……(誉め言葉)。
引き出しの多い作者でしょう。ゆえにジャンル分け不能。呆れかえるようなネタすらきっちりとした物語にして笑いに向けられる、次何出てくるかまったく判らない一際異彩を放つタイプです。フォローして追いかける価値あり。