彼は手を叩いて笑い続けた。そして、

彼には居場所があった。
取り立てて大事な場所ではなかった。
周りを固める連中は、むしろ気持ち悪かった。
けれども、居場所には違いなかった。

彼女はいつも一人だった。
居場所と呼べるのは、小汚ない机だけだった。
読みふける本には『人間嫌い』というタイトルが付けられていた。
彼は、彼女の姿が目に入るたび、舌打ちしたい気分になった。

どこにでもありそうな教室の風景。
ありふれた居場所に対する違和感。
なぜ俺は手を叩いて笑うのだろう?
いつまで手を叩いていればいいのだろう?

小さなきっかけが重なって、やがて訪れる崩壊。
そうなる前に止まれよ。誰か止めてやれよ。
願ったって取り返しのつかない、きっとありふれた出来事。
アイロニーとリアリティに、ぞくりとする。

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