殺す事が至上の愛だと信じる女性・桜子とそれを毎日防ぎ続ける男性・春哉とのスリリングな愛情(?)の形を描いた物語でした。
一体なぜ彼女は殺す事が愛だと感じるのか、そしてなぜ彼は愛ゆえとはいえ自身を殺そうとする彼女の傍に居続けるのか……
それはそれは、気になりますよね。
それは読んでのお楽しみなのですが、簡潔な感想をお伝えするなら、とても優しさと正義感に溢れた男女のお話となっていましたよ。
とにかくあの手この手で殺そうとする彼女と、それを淡々と躱し防ぎながら、しかし確かに愛し合っている二人の様子は常人には理解できない様子でしたが(笑)、だからこそしっかりと惹きつけられてしまいました。
プロローグ――。短い文章で、ヒロインが狂気に満ちていることをこれでもかと見せつける。引き付け方がうまいと素直に感心。
そして期待を表すような緊張感を抱きつつ第一話から読んでいくと……。
ヒロイン怖えええええええええええっ! 本気で主人公を殺しにかかるとか、病み過ぎっ! しかしそれがこの作品の肝であり、そんなヒロインの愛(らしいです)をうまくあしらう主人公の淡然とした立ち振る舞いもまた素敵(●´ω`●)
読み始める前は、ヒロインが一方的に主人公のことが好きなのかな、と思っていましたがそうでなく、両想いということが分かってなんだかほっこりしちゃいました。過去の出会いの話も最高っ。
多くの読者に評価されるのも納得の、中編としてうまくまとまった傑作だと思います。皆さまも是非、『カクヨム』最恐のヤンデレ娘を御賞味あれっ!
設定は両手に花のくせに、なかなか苦労はしていて、読者としては「ぐぬぬ」とお決まりの表情で読み進めるも、内容は、なかなかに読みやすい文章で、結末まで一気に持って行かれました。
愛情表現というのは、その原体験、つまりは親から受ける愛情に影響を受けるのかもしれません。
今は、まだ幼く儚く歪な彼女の愛が、どう花開くのか……徒花じゃなきゃ、いいけど(苦笑)
死もね、生の延長線上の結末でしかないから、どう生きるかはどう死ぬかでもある。誰かを愛す、という行為も、誰かを殺す、という意味では二律背反で成立もすると思うよ。
エロスとタナトス、アガペも少しだけ感じ取れた。
楽しく読ませてもらいました、ありがとうございます。