閉塞した限界集落が舞台の、良質なパニックホラー

人が死ぬと留人(るじん)と呼ばれるゾンビになり人を襲う。
その様な世界観の中、とある限界集落で送り人として二度目の眠りを死者に与える主人公恐山。
普通のゾンビものは一風違った設定に興味を惹かれ、本作を読みましたが、大正解でした。

住人の殆どが高齢で総勢100にも満たない限界集落での閉塞した空気と、送り人と留人という哀れで救いが存在しない錯覚に陥ってしまう様な物悲しさ。
どこか人を惹きつける魅力を持った独特の雰囲気からこの物語は始まります。
もちろん話はそれで終わりません。
物語が動く頃に巻き起こる事件。僅かな住人はこの脅威に慣れないながらも立ち向かうことを強制され、事態は大きく動き出します。

無謀で蛮勇だけど人としての優しさを忘れていない若者。自らの役目を理解し、覚悟を持って使命に準ずる老人。
震えて逃げ隠れる人、なんとか抗おうとする人。
様々な人の生き様が魅力的で、彼らがこの後どの様な物語を紡ぐのか?と自然に感情移入させられました。


そして物語の肝となるゾンビ。
何が起こったのか? 何故この様な事態になったのか? これからどうなるのか? あれは何か?
まさに自分がそこに居る様な先の見えない恐怖とともに、続きが読みたいと強く惹きつけられページを読む手を止められませんでした。

もっと早くこの作品を読んでおくべきだったと後悔するとともに、よくぞこの作品を読んだと今の自分を褒めてやりたいくらいです。


"ホラー"を読みたい人。
是非本作を読んで下さい。恐ろしく悲しい、最高の恐怖体験をお約束します。

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