第4話 なんだ、大きな猫じゃないか

高祖父の日記を見つつ、僕も何となく日記を書いている。あの日記よりは面白くないが、ともあれ毎日続けてはいる。

幼い頃から高祖父の愉快な日記を読んでいたせいで、僕はすっかりアンティーク好きになっていた。それらが高じて物書きをし、それまで日記しか書いたことないのに小説を出した。運良く少しばかり小説が当たり、会社を辞め、東京から熊本に戻り、一度も行ったことのなかったが懐かしくて仕方のない二本木に居を構えた。ワケありだかで開発から取り残されて二束三文で買った家は、かつて下宿屋だったという。案外高祖父のいた下宿屋かもしれない。

クーラーも何もない家だが、案外気に入っている。暑ければ窓を開けて寝ればいいのだ。


ある夜中、実際窓を開けて寝ていると大きな音がして飛び起きた。四m程もある銀と黒の大きな猫が窓から顔を出して僕を見ている。

あまりの大きさにどうしようかと思ったが、僕は自分が近藤君の子孫ではないことを思い出した。


そうか、世間が大騒ぎしない時代になるまで待っていたんだな。

それで、なんだ大きな猫じゃないかと言った。

 猫は嬉しそうに小さな声でにゃあと言った。


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なんだ、大きな猫じゃないか。 芝村裕吏 @sivamura

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