どこまで真実でどこまで虚構か、どこまで本気でどこまでふざけているのかがなかなか掴めないギリギリのスリリングさが作品全体を貫いています。荒唐無稽で実験的な内容であるようで、基本的な文章力がかなりしっかりしていてリズムやユーモアも秀逸。
何か、SFというのではない気がしました。無理にSFというのならば、イタロ・カルヴィーノや、ロジャー・ゼラズニイといった辺りを彷彿させます。凡庸なドラマ仕立ての作りと違って、一人称の語りで繰り返される更新を続ける平行世界。興味深いです。この作品は短編ですが、主人公と登場する(絶世の美女)との、更新されるごとに変容していく恋愛模様? を、会話形式を使って、リアルで、コミカルに広げて行けば、長編小説にもなりそう。まだ、一本しか読ませていただいていませんが、素晴らしいと思います。SF以外の公募とかでも、通用するのでは?
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