第4話

 ほんで、おまえら、わしに何をいいたいんじゃ、こら。三章の小説は読ましてもらったわ。まあ、よう出来ている。文字も書けない文盲が大勢いるなかで、よくこれだけ小説を書けるやつだけで平行世界を移動したよなあ。これはおまえにいっとるんやで。わかっとるんか。嫌味でいうとるんだ。わかるか。おまえら、小説を書くことで平行世界を移動したやつらは、文盲のやつらを無視しとるんじゃ。文盲はみんな、置いてきぼりだったわ。そういうもんが全部わかっとるのか、おまえらに聞いとるんじゃ。この小説は無限につづく平行世界のわしらがみんな読むんじゃろう。そんなわしらみんなに向かって書いている。

 おまえら、世界をなめてるだろう!!! 何が強姦じゃ。何が殺人じゃ。そんなもんはまったくたいした問題じゃないわ。わしが何かわかるか。わしが何なのかわかるか。平行世界へ逃げ出したおまえら全部の融合した集合知性だ。そのわしから見て、おまえらがどう映るかわかるか。ゴミ、クズ、根性なし。生きる価値もない卑怯もんの集まりだよ。

 いいか、おまえら、近所の女を強姦なんてまったくたいしたことじゃないわ。おまえらの中には、近所の女では飽き足らず、町中で連続強姦事件起こして捕まったやつもおる。あの近所の女の本音を聞いてみたら、八割和姦、二割強姦だと思っとるわ。聞いて確かめたからまちがいない。それで現実から逃げ出したくなって平行世界へ移動だ? 笑わせるぜよ。わしはおまえらが犯したかった女すべてを犯しておる。わしはおまえらが殺したかったやつらをすべて殺しておる。

 わしらの中には、世界を滅亡させたやつもおるし、世界を征服したやつもおる。それに比べれば、貴様らの強姦や殺人なんてちっせえ問題だ。わしはおまえらすべての集合体だ。そのわしに向かって何かいうことがあるか。

 わしはおまえらのしたかったことのすべてを行ったし、わしはおまえらの思いつきもしなかったことを大量に行ったわ。

 おお、それでなんじゃ。わしが存在したら、おまえら一個一個の個体は存在する必要がないんじゃないのか。わしという集合体がおったら、平行世界を移動するおまえらなんて一人もいらんのじゃないのか。

 おお、わしは怒っとるんじゃぞ。なんで、こんなしょうもない小さな事件で、全平行世界を融合する集合体が作られなければならないんじゃ。おまえらにそんな価値はないだろう。このゴミ、クズ、根性なしが。

 わしはおまえらの欲望を全部充足しておるし、おまえらの不満も全部抱え込んでおる。あらゆる平行世界の自分を融合した自分が存在する平行世界が存在するのも、当然の平行世界論だよなあ。わかるじゃろう。わし一人おれば、おまえらは誰一人存在する必要がないんじゃ。おまえらは誰一人存在する必要がないんじゃ。

 わしは無敵じゃ。神になったこともあれば、素粒子より小さくなったこともある。そんなわしに、おまえらの強姦しただの殺人しただのくだらんチンピラ自慢なんぞいらんのだ。わしは自殺したこともあるし、死んでから生き返ったこともある。神になったこともある。そのわしから見たら、おまえらは本当にくだらないゴミみたいな連中だ。不動産屋など、世界中の不動産屋をぶっ壊してまわったわ。あの近所の女よりいい女を抱いとるし、乱交パーティーにも何度も出席している。十代の若いぴちぴちの女のな。

 世界が滅亡しそうになって、殺し合いの中を生きのびたことだってある。その生きのびるために逃亡していた間に知り合って抱いた女は最高だった。殺し合いや強姦など、世にあふれて折るわ。この世界は混沌とした生存競争の野生の世界だぞ。それがわかっとるのか。

 これを読んだ平行世界のわしがおれば、こう考えてくれればいい。全平行世界のわしを融合したわしが存在するから、おまえたちはみんな平行世界へ移動などせずに逮捕されればいい。それでまったく困らないし、平行世界のわしはおまえたちの望んだすべてを体験しておる。

 わかったか。わしは、小説を書いて平行世界へ移動する必要もない。ただ、わしと融合する全平行世界のわしへ向けて、あらかじめ書いておいてやろうとそう思ったんじゃ。その方が見っともなくていいじゃろ。おまえらは平行世界へ移動する必要はまったくない。連続殺人でも、連続強姦でも、世界征服でも、自殺でも、なんでも好きなようにしたらええ。すでに、全平行世界のわしが融合されたわしが存在しているんじゃから、おまえたちはまったく存在する必要がないんじゃ。わかったら、この小説を読み終えて、まだくだらん小説を書き足したりしたら、承知せえへんぞ。

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