淡々と物事が進む中にも

ここでは主人公の女子高生『子熊』が初めてカブと出会い、乗り始めた上で変わってくる様々な関係が描かれている。
読んでみるとわかるが、子熊は元々賢く、知らないものに対してよく慎重に考えて行動できる人物のように読み取れる。学生ではあるけど充分に大人らしい考えを持つ人物のように見えた。なのでこれは成長作品というより、カブを通して子熊の生活環境や認識の変化を見守る物語であるような気がする。
自分の行動範囲の限界がカブによって変化すること、変化したことを知って何ができるかを考え、時には限界を知ろうとしてみることなど、子熊は自らの等身大を物差しにしつつ、淡々と行動していく。そうした様子は地味と言ってしまえばそれまでかもしれないが、それでも冒険をするような感覚、また子熊への頼もしさや応援したくなるような気持ち、また途中途中で挟まれるカブへの愛着が静かに心地良い。
ハリウッド映画のような大きく派手な展開は無いけれど、例えばデヴィッド・リンチの「ストレイト・ストーリー』のようなロードムービーが好きな人は気に入るかもしれない。

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