物書きならではの多重露光視線。

タイトルに惹かれて、一気に読んでしまった。
普段、私は 一話ずつ読んで感じる 抱え込み方式で
どちらのお宅も ゆっくり訪ねているのだが
時折、こうして 頁を閉じることができない
誘われたまま、最後まで読むことになる作品に出逢う。
ここに何か言わないと、先に進めないような。

ひとつ ひとつの 作品の
ひとつ ひとつの 言葉が 大切に選ばれている。
配置ひとつとっても こうして並ぶのに ふさわしいように。

短い作品は、雪のかけらになって 沁みわたる。
すこし長めの作品は、情景を用意して 待っている。
どの作品もいいが、とびきりすきな一つを挙げてみたい。

短編「そんな恋愛小説だと思ったら大間違いだよ。」
 ロマンチックな詩の冒頭。 はじまる独り語り。
 吹きさらしの家屋の地下に潜む 一人の人生。
 物書きなら、こんな終わりは、案外理想なのかもしれない。

最後に、ヒトリゴトに賛同する。数少ない同志になった気分で。

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