隙のない変態が織り成すロボットファンタジー!

本作はロボットものではあるものの、「異世界ファンタジー」に分類される風変わりな作品です。何しろこの世界では、ロボット同士が戦闘しながら魔法を使ってきます。

魔法に少し科学が入り混じったような異世界へ転移した主人公、男子高校生【東城 世代】は重度の……いや、イカレたレベルのロボット好き。ヒロイン達の裸よりも、ロボットの造形美に興奮すると公言してはばからない変人です。

紆余曲折を経て、主人公の下には次々と魅力的なヒロイン達が集まりハーレム状態となるのですが、そもそも女性が眼中にない彼はフラグをへし折り続けます。そんな彼の行動原理はシンプルで一貫しているため、読者も「ああ、このフラグ折れるな」と予想できるようになってきます。これがまた清々しいほどの折り方で、読者も苦笑したり爆笑したりと飽きる事がありません。

しかしこのブレなさが、徐々にシリアスになるストーリーにおいて重要な指針となり、ある意味でどんでん返しの基点になるのも見逃せないポイントです。


各エピソードは読みやすい長さで、またライトな文体のおかげでテンポ良く読み進められます。ロボット(レムロイド)同士のスピード感ある戦闘シーンなども魅力。ロボットあり、魔法あり、ラブコメあり、陰謀ありと、様々な要素が揃った鉄板構成で、大ボリュームながら一気に読める作品です。


また本作は「異世界転移、チート、無双、ハーレム」の要素を取り入れつつ、それら全てに対するアンチテーゼを含んでいます。

・異世界ではあるが、現実世界との縁が完全には切れていない(かもしれない)

・主人公にチート的なセンスと能力はあるものの、女神などに授かったものではなく、現実世界で修練して身に着けた(勉強にも仕事にも役立たない)スキルである

・飛ばされた世界の住人でない主人公には欠陥があり、自力で戦えない。難しい条件を満たさないと無双できない

・ハーレムは構築されるが、主人公の特殊な嗜好のためフラグが折られまくる

作者いわくノープロットで書き進めたそうですが、プロットなしでこれが書けるのかと考えると驚きを禁じえません。


ちょっと長い作品ですが、気後れせずにページをめくってみましょう。気づけばエンディングにたどり着いていることでしょう!

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