と。
書いてしまうと、他の読者さまからお叱りを受けるかもしれません。
このお話はとてもシリアスな、ゴブリンとの攻防を描いた物語です。
ゴブリンにとって、人間は『餌』です。
食べるために。売るために。そして、子種として。
狩りに来るのです。
孤立無援の小さな町。
人々はどう対抗するのか。
戦う者。守る者。支える者。
残酷で悲惨な現実に晒されながらも、それぞれが前を向いて進んでゆく。
あっけらかんとした冒険譚ではないので、読者を選ぶかもしれません。
斯く言う私も、前評判を聞いておりましたので警戒しつつ読み始めました。
そうしたら……!
毎話毎話、素敵オヤジが!!
自他共に認めるおっさん好きの私としては、このオススメポイントを語らない訳には参りません。
幸い、面白がってくださった作者さまには了解をいただきました。
このお話は。
とっても素敵なおっさん図鑑です!!
一つの街を巡る攻防戦。
守るのは半ば見捨てられた街の人々、攻めるのはゴブリンの大群。
このゴブリン、ただの獣ではなく、指揮官に率いられた一端の軍隊です。
知性あるもの同士の集団戦ということで、ヒーロー物ではなく、戦記ファンタジーが近いでしょう。
ただ、街とそこに住む人々を描ききった物語ですので、あくまで現場からの視点が貫かれています。
例えが古くて申し訳ないのですが、戦闘シーンの乾いた筆致や、序盤の凄惨な雰囲気は、ペキンパー監督の「ワイルドバンチ」辺りを思わせました。
しかし、決して硬いばかりの暗鬱とした話でもありません。
多くの犠牲を出しながらも、希望が絶えることはなく、正しくラノベな軽さも備えています。
最初に発表されたものから、改稿されたということです。読みやすさには充分配慮されていました。
ゴブリンとの息詰まる戦いが横軸なら、主役の一人オルフの成長譚が縦軸でしょうか。
そして“人間兵器”――これが何を、誰を指しているのか、一体どういう存在なのかは、ぜひ本編で楽しんでください。
血生臭く、泥臭く。
ファンタジーだけど、シビアな戦闘が読みたい、という方には、これはバッチリはまるでしょう。
そう、バトルではなくて“戦闘”です。
甘くないラノベ、貴重な逸品です!
このお話は、出てくる人々すべてが主人公です。不要な人物がいません。すべてに絡んでいます。
ゴブリンもそうです。ゴブリンにキャラ性が必要か? 必要でした。ゴブリンにも事情がある、性格がある。それらを踏まえた上でじっくり読んでみてください。
全体として眺める、ハラハラドキドキする物語はまるでハリウッド映画のようです。戦闘シーンもふんだんに盛り込まれ、読んでいると体が自然と動きます。焦る気持ちも伝わってきて、今まさに自分は物語の中にいるのだと思えます。映画ならではの感覚です。
それ以外にも、キャラそれぞれの個性が立っていて、ぐいぐい引き込まれます。人々の普段の生活が見えるからこその対比など、ぞくぞくします。
最後まで一気に読めました。わたしはグロいとは思いませんでしたが、ひょっとしたら読者を選ぶかもしれませんのでそこだけお気をつけください。ハリウッド映画がOKならセーフです。
……しかし、わたしの感想は小学生並みとして有名です。見当違いなことを書いていたらすみません。でも大丈夫! 他の方々の素晴らしいレビューをご覧くだされば、万事全てOK!
個人的なキャラ推しはスージーです。めいびー!
でも先入観なく、どうぞ映画としてご覧ください~!
祭の日、突然街を襲ったゴブリンの軍勢。ただし、奴らは闇雲に押し寄せてきたわけではなかった。軍陣を整え、策を練り、周到に計画された侵入作戦にのっとって、深く静かに侵攻してきたのだ。
邪悪で欲望剥き出し。しかも人間を食べる凶悪なゴブリンたち。だが、奴らは、ある恐ろしい目的があって人間の街を襲っていた。
対する人間側の切り札は「人間兵器グロワール」という謎の武器。果たしてそれは如何なる代物か。
本作の見所は、なんといってもゴブリンたちだ。
ゲームやファンタジーでは、最初にやっつけられる、いわゆるザコキャラ。ところがもし、こいつらがきちんとした指揮官を得て統率され、集団で襲ってきたらどうだろう? それは極めて恐ろしい魔物の集団足り得るのではないか? その着眼点から書かれたものが、本作「人間兵器のグロワール」である。
作者はゴブリンの襲来という設定とともに、町での攻防戦を描写する目的で広大なマップを作成し、そこに敵と味方を配置して、まるでチェス盤上の戦いのごとく、本作のバトルを描いている。
そしてさらに、人間側とゴブリン側に、多くのキャラクターを配置し、それぞれに個性とドラマ、役割を割り振り、物語に複数の縦糸を編み込みつつ、激しい戦闘という金糸を横糸に配し、絢爛たる戦場絵巻をここに織りあげて見せた。
物語の冒頭では語られない登場人物たちの背景が、ゴブリンとの戦闘の中で徐々に露わになって行き、それが次なるバトルへの布石として配されてゆくプロットは秀逸。
そして、作中で描かれるバトルも、泥臭く、残酷で、なかなかこういった物に昨今は出会えなかったため新鮮かつ懐かしい。
本作の魅力はなんといっても、ゴブリン描写。低級の魔物であるゴブリンを、恐ろしく、残虐で、かつ低能で欲望に正直に描いている。この人間とは全く異質の生命体に与えられた独特の息吹、この異質さが、得も言われぬ恐ろしさを孕んでいる。
本作の題名にもなっている「人間兵器」が、物語前半で投入されるも、いきなり縛りを受けてしまう展開も読んでいて興奮する。
え? これどうなるの? と最後まで息もつかせぬ展開の異色のバトル・ファンタジー。
あなたも、ゴブリンに恐怖せよ!
重厚な雰囲気の中で展開されるダークファンタジー。
登場人物たちにそれぞれの個性が、さらに物語の魅力を引き立てます。
1話読み終える度に、物語の中で起こった出来事が、ずしりと心にのし掛かってくる。
設定や世界観。細部まで丁寧に練られた構造は、読んでいてすんなり物語の中に入ることが出来ました。
そして、なんと言ってもカッコいい戦闘シーン。
細部までとことん拘った手に汗握るそれらの表現は、文章的演出力があるからこそ、出来る表現だと思います。
ゴブリンというと、今までのファンタジー作品では簡単に倒せてしまう経験値稼ぎのモンスターです。
ですが、この物語では魔王なみの驚異なんです。
人間対ゴブリンの戦い。
皆様もぜひ、ご堪能してみてください。
にぎた
本作で描かれるのは、知恵あるゴブリンとそれらに襲撃されたとある街の人々による決死の攻防です。
RPGなどで雑魚敵として用意されるゴブリンが? などと侮るなかれ。人よりも強靭な肉体を持つ連中が軍隊行動し、歴戦の戦士さながらの技量で迫る様子は恐怖の一言です。
作中の描写から、ただのゴブリンの群れを簡単に壊滅できるような街の守備隊の人々が、ちょっと進化して知恵と技術を身に着け、そして優秀な指揮官を得たゴブリンに翻弄される絶望は息を呑みます。
特に大将ゴブリンであるグランが人質を使う、などという人の優しさを逆手に取った行動は恐るべき脅威に思えました。
それに加えて援軍としてやってきた人間兵器が早々に枷をつけられたときには「大丈夫か?」と不安になりもしましたが、その後の第一話で頼りなさげだった少年二人の活躍に胸が躍りました。
ヘンリーのくじけない意志とオルフの覚悟、少年誌のようでありながらダークな部分もあるこの展開は、彼らの今後を夢想せずにはいられません。
きれいなところで終わるんだな、と感激する反面、続きはないのか! と憤慨してしまう気持ちもあります。
登場人物どころか読者も翻弄されるこの作品、おすすめです!