• 異世界ファンタジー

「風塵の碑」第42話 あとがきめいたもの。10万字突破。

 こんにちは、結愛りりすです。この話で10万字超えました。

 刺繍。

 身近にありながら、実はどこが発祥でどう伝播してきたのかよく分かっていないというミステリアスな技術の一つです。

 縫う、という技術自体は、紀元前15000年の後期石器時代の発掘品の中に針が見つかっているころから有史以前からあることが分かっています。

 刺繍に関しては、スカンジナビアに青銅器時代に作られた刺繍入りのチュニックが残っていたり、中国に周(紀元前1046年〜紀元前256年)の「礼記」にも養蚕や刺繍に関する記述があって、実際湖北省で戦国中期の刺繍が発見されていたり、エジプトのビラミッドの中から刺繍の施された布が発見されたりと、とにかくその技術自体は古代からあったことははっきりしています。

 現在の刺繍で使われるステッチの全ては古代エジプトにはあったそうですよ。

 エジプト刺繍はオリエント・バビロニアに伝わり、さらにローマに伝わりました。

 中国刺繍も海を渡って日本に伝わりました。

 発祥はよく分かっていませんが、そんな各地での刺繍が発展していくのに大きな役割を果たしていたのがインドであることは確かです。

 インドの良質な綿製品、綿糸は中国に、そして西アジアに伝播していき、それらを用いた刺繍は大きな発展を遂げました。

 刺繍は中国でも官位を示すものとなり、ヨーロッパでも権力を示すものとなりました。

 莫大な素材と手間のかかる刺繍は、中世ヨーロッパでは富と権力の象徴として扱われるようになり、一般庶民には普及しなかったそうです。

 一般庶民が刺繍に手を出せるようになるのは織物貿易が盛んになる18世紀まで待たねばなりませんでした。

 
 アルファーン帝国ではプロローグにも書いてある通り「南海交易路」を確保しております。この世界での綿花の原産地は用心棒のマウルやミチャのお母さんの出身地であるサヴール王国およびその周辺諸国ですが、この南海交易路でアルファーン帝国と繋がっています。

 このため綿花の流通は非常に円滑で、比較的安価に綿製品が手に入ります。

 そんな理由から、よっぽどの庶民は別として、そこそこの上流階級であれば手軽に刺繍に触れる生活を送っています。

 ラーマの刺繍趣味はそんな流通から支えられています。

 ちなみに遊牧民族達の刺繍はすぐに手に入る羊毛を用いているため、そんなにお金はかかっていません。なので彼らは生活の一部、文化の一端として刺繍を有しているという設定です。



「風塵の碑」

https://kakuyomu.jp/works/16817330667405923497

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