夜前 樹

あたし、ただのファン。 彼の小説を読みたくて読みたくて、あたしも書き始めた。

スマホの中にいたのは、AIではなく、見知らぬ幽霊でした

父から魔法少女を継いで、十年になる。 今年で二十四歳。留年学生。勉強にも魔法少女にも身が入らない。 そうだ、世界を滅ぼそう、本気で。

医師になって数十年。何人も見送った私は、もうすぐ死ぬ人がわかる。

高校生にとってラインは日常。非日常なのは、恋愛に発展するかもしれないライン。

この悪い癖があるからこそ、出会ったんだ。

放課後の教室には、二人を除いて誰もいない。 夕暮れの茜が、教室を、彼女を、彼を染めている。 彼女は机の上に座って足を組み、挑戦的に言った。 「さて、それでは問題です」 ――…

ダイナマイトによる、ビルの爆破解体。それが彼らの生業だった。 轟音と土煙。一見して派手なその倒壊現場には多くの見物人たちが集まる。 娯楽の少ない地方の都市などであれば、立派なエ…

姉が人魚と結婚した。生まれた子に足が生えていれば陸で、ヒレならば海でそれぞれが引き取って育てることにしたらしい。 そういうわけでヒレだった姪は、海で暮らしている。 彼女のブームは…

いつも、祖父の仕事場にいた。 背中を丸めてぴたりと動かず、それでも手元だけは精密に動かしていた祖父。 祖父は、細工師だった。 その節くれだった指先から、作品が生まれる瞬間を見る…

時計に従って生きているある一家の話。

部屋を、いかに快適にするか。 これが彼の全てだった。 小学校のうちに、一級建築士顔負けの知識を独力で手に入れた。 理想の家具がない、と作ったサイドテーブルはグッドデザイン賞を獲…

おうち時間の間に考えていたこと。コロナ禍の自粛期間中に抱いた確かな真実。

自他共に認める美人である奈都は、透子というバイセクシュアルの女性を友人から紹介される。「デート」をし、付き合うことになる二人だったが、奈都は次第に不安をつのらせてゆく。

「私がやりました」「私もやりました！」「いや実は僕が」「ふざけるな！ やったのは俺だ！」 神聖なる推理の場で、犯人が次々と名乗りを上げる。 「探偵さんも現場にいたでしょう？」「ま…

　人類が滅んだ世界で唯一生き残った知性体、イクスは、奇妙な門から救いを求められて、この世界にやってきた。 　人のために生まれた彼は、時に戦い、時に飯を振る舞い、人の笑顔を見るこ…

四月はエッセイを書こうと思い立ち四年目になりました。 私は桜を見て思い出したい。 捨てることはしたくない。

ニーナは私のストラップだった。お気に入りの、ビックベア。 そのストラップが踏切の向こうに落ちた時、彼は現れた。 くたびれたカッターシャツで、黒ずんだ運動靴をはいた彼。 ーー彼は…

兄が死んでも生き返るのを良いことに、兄の命を売る仕事をする兄妹。だが、ある時、ふと妹が簡単に命を奪っていく客に違和感を抱く。 ーーお兄ちゃんの命がどれだけあるのか誰にも分からな…

ツノコンプレックス

結城美也《ゆうきみや》と僕――山崎陸《やまざきりく》は親しい友達。幼馴染でも腐れ縁でもなくて、ましてや恋人同士なんかじゃないけれど。 陸は中学生の時から美也のことが好きだった。二…

久しぶりに再会した幼馴染が下ネタ好きになっていた。なんでも、女子中学校の友達に影響を受けたらしい。 立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花――なんて言葉が恐ろしいほどに似合う外見…

卒業式の前日。家出を敢行することにした。だけど隣には何故か、部活の後輩のミチルがいて、家出はちょっぴり旅みたいな感じになっていた。

「自分が殺された時は、二十四時間、警察などには連絡せず、『死を見る会』のメンバーを呼ぶこと。そしてメンバーに自分の遺体を観察してもらい、議論を交わしてもらいたい」。 　各々の死…

　廃墟と化した古い屋敷に、その少年は住んでいた。 　夜になると黒髪黒目が銀髪赤目へと変化し、人間では持ち得ぬ力と特殊な能力を使える彼は、種としても個としても名を持たない。 　…

　上月沙夜は『終わりの街』へと迷い込む。 　この街で、その生涯や、役目を終えたモノたちが、各々好きな〝願い〟を手にして、次の生涯を夢見て眠るための旅に出る。沙夜は〝願いを叶えてく…

神社の裏にひっそりと生えている桜の木。その幹を鉈で傷つけると、こことは違う世界に行くことができる。帰ってくるときは同様に、向こうの世界で桜の木を鉈で傷つければいい。 あの日、小…

あなたに大切なものはありますか？ 『蝕鬼病』 それは人間が化け物へと変異する病である。その進行を唯一の止める方法は、人を食らうこと。 その病にかかったアイラのため、衛兵である…

「わたしが死んでも、わたしのこと忘れないでくださいね」 幼馴染のクロナは、そう言い残して星噛みに飲み込まれた。ユルトは彼女を助け出そうと、星噛みと戦った。でも、できなかった。…

「自分が何のために生まれてきたか知ってる？」 その質問に小首をかしげるとそいつは〝死狼《しがみ》〟という生き物がいると言った。死狼は人間を殺して食べると。自分達は死狼の力を欲…

誰でも誰とでも結ばれるようになった新時代で、廃れたはずの“運命”を見出そうとする少女達のお話。 発達した科学力により、＜α＞に何も珍しさを感じなくなった世の中。運命の存在どころ…

地元が嫌で、ただそこから抜け出したい一心で大学進学と共に上京した。 けれど、うまく馴染めず、やりたいこともなく、ただあてどもなく街を見るだけの日々。 ある日、吉祥寺駅から少し歩…

映像撮影の現場には、とても多くの人間が関わっている。 監督、役者はもちろん、細かい仕事をするスタッフたちも撮影を支える重要な役どころだ。 助監督補佐見習い。 そんな雑用なのか本…

「私、幸せになると死ぬ呪いにかかってるの」 　それは下校中に恋人から告げられた意味不明な言葉。どうせ本当のことではないと結論付けた俺は冗談として流すが、なら証明してあげると言っ…