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年末のご挨拶+年末年始におすすめしたい第9回カクヨムコン8作品

いよいよ今年も本日で終わりですね。
みなさま年始を迎える準備は済まれましたでしょうか。
今回は今年最後の近況ノートとして年末のご挨拶と、昨年に続いてカクヨムコンの個人的お勧め作品を紹介します。

今年は受賞二回と出版という素晴らしい栄誉に与った、感謝しかない一年でした。
作品を読んでくださった方、お力添えくださった方々のおかげです。本当にありがとうございます。
私は至らぬところばかりの人間なので、日々多くの人に許されながら生きています。人に恵まれていることを感謝しつつ、自分も多くを許せる人間になれるよう年を重ねていこうと思います。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。


では、昨年に引き続き年末年始にお勧めしたいカクヨムコンの作品を紹介します。
今回は短編をほとんど読んでいないので、長編のみでホラー部門を分けます。

【一般部門】3作品
◆『魁国史后妃伝 ~その女、天地に仇を為す~』悠井すみれさん
https://kakuyomu.jp/works/16817330666693315522
皇太子の生母は死ななければならない法のある国で、姉と甥を殺された翠薇が復讐を誓う。中華風ファンタジー。
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すみれさんの作品はどのお話もクオリティが高いので、安心して読めます。筆の安定感がすごい(あと早い)。
今回のお話はいわゆる復讐譚で、主人公である翠薇があの手この手を使い愛する姉と甥を死に追い込んだ相手に報いを受けさせていきます。
その手腕が実に見事なのと見苦しくないのとで、やってることは復讐なんですが、清々しくていやみがない。いいぞもっとやれの気分になる不思議。
次に何をしてくれるか楽しみです。

すみれさんはもう一作、完結作のこちらでも参加されてます。
花旦綺羅演戯 ~娘役者は後宮に舞う~
https://kakuyomu.jp/works/16817330647645850625
国一番の花旦を目指して舞う燦珠の活躍を描く、中華ファンタジー。
上記の作品とはまた違った華やかさや明るさを楽しめるので、お勧めです。

◆『センチメンタル・ファニー・ストーリーズ』坂水さん
https://kakuyomu.jp/works/16816927861569478763
惑星缶詰循環工場を訪れた「私」が、そこで出会った「博士」に聞かせる星語り。
SFですが、タイトルのとおり「センチメンタル・ファニー」が最適解。
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星語り、最初は(博士と同じく)ロマンチックできらきらした話かと思っていたのですが決してそんなことはなく、若干きらきらしたものは挟まれつつも、ふわふわ感は(今のところ)ないです。ただ、浮ついたものなどなくてもがっつり胸を鷲摑みされるので心配いらない。
一つの星語りが終盤になると、果たして博士はこれを気に入るだろうかとそちらも気になるのがこのお話の良いところ。
今回の星語り、博士はどうでしょうね…(いつも言ってますが私は好きですよ、博士)。

◆『あの五月の河で出会った貝がらみたいな君に、このメロディを贈ろう。』珠邑ミトさん
https://kakuyomu.jp/works/16817330667273509932
音楽科のある高校ながら普通科でオケ部のレギュラーメンバーとなった妙。
彼女を取り巻くぎこちない人間関係がやがて大きな波を引き寄せていく…
現代ドラマですが、ミステリーも入ってます。
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妙さんの立場に「大変だなあ…」などと思っているうちにどんどん大変なことになっていくのですが、ミステリーも含まれているので多くを語るのは避けます。
前半では謎をたくさん抱えます。
一つだけ書くとするなら、高校生やあの年代の持つ未熟ゆえの傲慢さの描き方がとてもリアルで、なんというかこう、身につまされます…。
だからこそ、妙さんには幸せになってほしい(書けないことを凝縮してまとめるとこうなる)と願いながら読んでいます。


【ホラー部門】5作品
◆『もしくはだれかの冷たい星』尾八原ジュージさん
https://kakuyomu.jp/works/16817330667522303586
中学生のあきは、ひょんなことから手にした百円玉の持ち主である賀古さんと出会う。あきにとってその百円玉は、不安を静めるお守りのような存在だったのだが…
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『みんなこわい話が大すき』でカクヨムコン8ホラー部門大賞を受賞されたジュージさんの新作ホラー。
https://www.kadokawa.co.jp/product/322307000942/
↑みんこわ、かわいい装丁ながら中身はしっかりホラーな作品。面白いので、ぜひ。
主人公であるあきちゃんが、とてもよいのです。中学生らしい不安定さもあるのだけれどもとても聡明で、その年頃らしい清潔感がしっかりとある。
あきちゃんと賀古さんの関係が良くて、ホラーなんだけどこのまま仲良くいてくれたらと思ってしまうんですよね。
ホラーなんだけどホラーではないものを望んでしまう葛藤が引き起こされて、とても好きです。

◆『あいしてるよ、ずっと』木曜日午前さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330667763137951
アイドルグループの一員として活動する花枝梨雨の自宅マンションで、ストーカー化したファンが不可解な死を遂げる。その最期を目撃してしまった梨雨は…
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ホラー展開を楽しむ傍ら、華やかな彼ら彼女らの舞台裏にはこんな苦悶があるのだな、と新たな世界を知りました。
最初に抱いた「応援したい!」を、ずっと同じ純度で保つのは難しいんでしょうね。応援している年数とか馳せ参じた舞台の数で、ファンは自分にしかない自負を抱いてアイドルを見るようになるのかもしれませんね。
アイドルとして精一杯できることをしようとする主人公の足元を揺らすのがほかでもないファン、という関係性の描き方がぐっときます。

◆『泥を這い出て淵に浮く』森戸 麻子さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330668112035540
日常をそつなく送っている人々が、胸に抱いたものに導かれるように異界の神社へ足を踏み入れる。そこで差し出されたのは、一杯の椀。
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ホラー部門で好みに合いそうな作品を探していて、タイトルに鷲摑みされて拝読し始めた作品。タイトルよろしく中身もとても好みで、出会えて本当に良かったです。
異界の神社に足を踏み入れた人々のオムニバスなのですが、(今のところ)皆そんな大それた願い(石油王になりたいとか、全世界の女性にモテたいとか)を抱いているわけではない。人生や生活が今より少し楽になるための能力を、差し出されたそれを飲めば叶えられるとしたら…?
この願いと与えられた能力と結果のバランスがものすごく絶妙で、いい感じに背筋を冷たいもので撫でてくれて癖になります。

◆『呪いと仲直りする方法』未由季さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330667692511065
かつて好奇心のままにバケモノの住処に踏み込んだ少年達。その数年後、バケモノの呪いが彼らを襲い始める。
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恐怖を抱えながらも好奇心に負けて足を踏み入れてしまう少年達の様子や、その後の少年達それぞれの人生の情景が滑らかに脳裏に浮かんできます。丁寧ですが過剰な描写ではなくて、書かなくてもいいところは書いていない。
タイトルにあるように、少年達は呪いと仲直りできる方法を見つけて無事仲直りできるのか。少年達に迫りくる恐怖だけでなく湧き出す後悔も、読みごたえがあります。彼らの後悔は、絶望しかない未来に光を生み出せるのでしょうか。

◆『俺の変わった幼なじみ』瀬川さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330656400437454
なぜか幽霊が見えてしまう主人公聡見と寺生まれの良信は幼馴染み。たびたび心霊現象に巻き込まれる二人の行く先は…
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短編連作で一作ずつにちゃんとオチがあるのですが、どれもうまくて「おお…」となります。それぞれに人の業や背筋がひゅっとなる感覚があって、贅沢な読み応え。
そして良信くんのキャラが、寺生まれなのに不穏で冷徹で容赦なくて本当に好きです。現在8話時点でこれを書いているのですが、この二人の関係はもちろん良信くんがこの先どう変わっていくのか(あるいは変わらないのか)、楽しみにしています。


以上、一般部門3作品とホラー5作品を簡単ではありますが紹介いたしました。
気になる作品がありましたら、ぜひ開いて読んでみてください。作品探しの一助となれたら幸いです。

最後になりましたが、今年もお世話になりまして本当にありがとうございました。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。
みなさまにとっても良い一年でありますよう、心よりお祈りいたします。

どうぞよいお年をお迎えください。

6件のコメント

  • 今年は本当に素晴らしい作品をたくさん読ませていただけて幸せでした。
    来年も楽しみにしております。
    推し続けます・:*+.\(( °ω° ))/.:+
  • コメントありがとうございます!

    こちらこそ、白玉から始まって今はあの五月(省略すみません)と、たっぷり楽しませていただいた一年でした。ありがとうございます。
    来年も推していただけるよう、がんばって書き続けます。
    来年もどうぞよろしくお願いいたします!
  • 2024年1月2日10時過ぎ、別どころでの発言でご無事を知り、安堵いたしました。
    太平洋側の私ですらまだ胸がざわざわしているのに、そちらではいかほどでしょう。
    皆々様、ご無事で、落ち着けること、お祈りしています。(返信不要です)
  • ご心配ありがとうございます。
    無事に注意報も解除されて、沿岸に住む親族や知り合いもこれで普段の生活に戻れそうです。
    もうしばらくはどこにいても落ち着かない日々が続きそうですが、お互い大事にしましょう。
  • 今更ながら、ご紹介いただいてたことに気付きました!
    ありがとうございます!!!!
    お互いカクヨムコン、お疲れさまです。
    今年も何卒よろしくお願いします!
  • コメントありがとうございます!

    最後までハラハラしながら楽しませていただきました。
    本当に面白かったです!
    カクヨムコン、おつかれさまでした。
    こちらこそ、今年もどうぞよろしくお願いします。
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