明けましておめでとうございます。
昨年の暮れから書き続けていた「ファンダメンタルズ」という小説ですが、おかげさまで無事に完結いたしました。
https://kakuyomu.jp/works/1177354054884727760個人的には自分が書きたかったことのほぼ全てを言葉にできた気もしています。これまでカクヨムで書いてきた作品の集大成という感じでしょうか。物語の随所に過去の作品のテイストを残してあったりします。
自分自身、臨床現場に身を置く中で、科学的根拠だけでは人らしい価値判断はできないということを日々痛感しています。論理的合理性はきっと客観的には正しいのでしょうけれど、それにも関わらずヒトは合理性に違和感を抱く。そのギャップがどことなく不思議でした。医学的に正しいことが必ずしも患者を幸せにするとは限らないのです。非合理性こそが人間の情緒を基礎づけている、そんな気もします。
本作は精神科医療と哲学、そして人の情動について、時間と記憶をテーマに、SFテイストで描いた恋愛ファンタジーというような内容でしょうか。そんなに小難しい話ではありませんが、ジャンルを選定するに当たり、いったいどれに該当するのか、わりと本気で悩みました。SFほど高度な理論構築もしていませんし、ファンタジーというよりはリアルな現実を描いています。それでいて、現代ドラマでもないし……ということで、とりあえず現代ファンタジーを選択しましたけど、ジャンルにカテゴライズされない「何か」という意味でも、僕が書きたいものが書けたのかなと思っています。物語のジャンルはあらかじめ決まっているのではなく、読み手によってその判断が委ねられる。僕はそんな小説を書きたかったのです。
さて、本作はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありませんと言いたいところですが、モデルはいくつか存在します。特に作中のキーワードになっている「宙の名前」という写真集は角川書店より実際に刊行されている書籍をモデルにしています。タイトルをそのまま使わせていただいたのでここで改めて書籍をご紹介しておきます。
「宙の名前 新訂版」
https://www.kadokawa.co.jp/product/201003000048/「空の名前」
https://www.kadokawa.co.jp/product/199999883600/「色の名前」
https://www.kadokawa.co.jp/product/199999883622/「宙の名前」は1996年に放送されたテレビドラマ「白線流し」にも登場しましたので、知っている方も多いかもしれません。まさに本のプラネタリウム、とても素敵な本です。
僕が初めて書いた短編小説「来世でまた逢えるのなら、今度は君と何を話そう」
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883495043にも登場させました。「来世~」は昨年開催された「ファミ通文庫×カクヨム「僕とキミの15センチ」短編小説コンテスト」に応募した作品ですが、おかげさまで中間選考までたどり着くことができました。最近になって、また多くの方に読まれているようで、本当にうれしいです。いくつか素敵なレビューもいただいて、感激しております。
小説を書くというのは、もちろんコンテスト云々もありますけど、自分の書きたいことを言葉にできた達成感みたいなものがありますよね。でもそれが評価されたら純粋にうれしいです。
本年もどうぞ、よろしくお願いいたします。