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あの人の背

ふと道すがら、目に留まる人がいる。

通勤鞄に、ガサガサと鳴る紙袋、よくみれば
下に首を振り向けられた花束の柄を、握っている。

まず考えられるのは、転職だろうか。
黒いスーツのその人の背を見ながら、きっとこの人は、
いつか自分が書いたお話の、「あの人」だと思う。

想像の人物は、一生知り合うことが無くとも
もしかしたらどこかで、生きている人かもしれない。
そう考えると、無性に楽しくて

子どもの頃は、未来と世界に対して
そんな風に毎日、希望の影を求めていたなぁと思い出す。

確たるものの無いところ
知らぬ世界の大きすぎること。

その事実がもたらすのは、決して不安だけではなく
あっけらかんとした、期待でもあること。

自分の中から外へ、外から中へ。

血が廻るように想像がめぐる実感を、
なんとか、形に出来ないものだろうか。

3件のコメント

  • 流麗な文章ですね。高踏的だけど、非常にイメージとして親しみやすい印象を受けます。というのも、個人がテクストの情報を抽出する際に、これらの文はとても肉薄するのです。実感を持って伝わるというか、何というか。
    僕には書けないです笑

    この度、みーしゃ様の『何か書けるようになりたくて』に感激を受け、こちらに投稿を寄せました。また、拙作の評価ありがとうございます。読んで頂き非常に嬉しく思います。

    質問なのですが、みーしゃ様はどのような読書経験をされてきた方なのですか?
    好きな作家を取り上げていただければ幸いです。
    お暇がある時で構いません。御返事待っています。それでは!

  • お褒め戴き恐縮です。
    好きな作家は、寝物語に読んでもらった『はてしない物語』の
    ミヒャエル・エンデです。

    高校に入るまでは、ファンタジーばかり読んでいました。
    クレヨン王国シリーズの福永令三さん、
    魔女の宅急便シリーズの、角野栄子さんも大好きです。

    ハリー・ポッターの流行りにも行き合いましたし、
    少し陰のあるものに、惹かれるのかもしれません。

    大学以降は手当たり次第、文章を追いかけ、読みたいと
    思うものは、本棚から引き出し、何でも読みました。
    そのときは小説や詩文以外の棚に、興味がありました。

    人が一生に読めるものには、自然、限りがあるのだから、
    "無理な読書"、をしている暇はないというのが、当時の自論でした。
    (でも、授業に使う教科書、参考書類はちゃんと読みました^^)

    好きなものを多く見つけて、自分を知ろう、という公算だったのですね。振り返って、それで良かったと思います。

    人は、様々なものを薦めてくれますし、世の中には、宣伝文句も
    たくさん飛び交います。
    けれど、世の良書と言われるものが
    自分にとってもそうなのかは、読んでみなくては、分からないもので。

    内容を読んで楽しい読書+自分の足元と意志を確認できる何かを、
    最近は、求めているような気がします。
  • 質問に答えて下さり、ありがとうございます。
    エンデですか…!存じ上げない作家でしたので、興味が湧きました。

    みーしゃ様の言葉の源泉はどこから来ているのだろうと関心を持ったので、このような質問をさせて頂いた次第です。

    そうですね、確かに読書については自身が本当に凄いと思える作家を信じていればいいのだなとも思います。それは自分だけが抱いていればいい感情なのかなとも。

    生涯をかけて、自身にとって素晴らしいと思えるような良書を見つけていきたいなと思います。

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