過去に自分が書いたものを、レビューをきっかけに
思い出すことができました。ありがとうございます。
その中で記された御希望趣旨が面白く、
お返事のつもりで書いてみようと思います。
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product Pという短編で、はじめ、タイトルのPが何を意味するのか
色々考えました。
まずはお話の主人公であるAIのPAL(パル=「友人」という意味)の頭文字、
次にParents(親)の頭文字、そしてPerfect(完全な)の頭文字…
箱舟であり、実験室でもある奇異な環境としての宇宙船の中で
教育管理AIであるPALは、まさしく完全な人類の"親"として親権をふるいます。
出生から生活のあらゆる場面、最期の選択でさえ、AIの管理下におかれたとき、
彼もしくは彼女の"子ども"としてそれに従う新しい世代と、
AIをあくまで人類の利器として「使う」視点の、過去の世代が対立する。
以降、管理の面からAIが選んだのは、まずは人間が大きな社会を作る自由を奪うこと。
常に二人だけの人間とPALという距離感で、徹底した教育を行う。
これには一応の成果があったのだと思います。
でも、目的地に着くには時間がかかる。パルにとっては長すぎる時間だったかもしれません。
そして目的地に近づいたころ、パルが知ったのは、自身の価値基準、
教育管理AIとしてこれまで自分が成してきたことすべてを
ナンセンスにする事実。
そのときPALが選びなおしたのは、新世代の人類というよりも、
自身の在り方、Perfect Parentではなく、Perfect friend(=PAL)としての生き方
だったかもと、思います。
おそらく新生代は、PALの定めた基準のどれにも合格しなかった、いわば
「不出来な子ども」なのかもしれない。
けれどそのことをPALは彼らに直接言うでもなく、旧世代が唯一、
主観たっぷりに口にしただけでした。
今も昔も、親が自身の価値基準で、子どもの在り方や考え方を非難したり
行動を強制することがあります。
それは一人の人間として生きてきた経験から、良かれと思って成すことでも、
次の世代を担う子どもにとって、また社会にとって本当に好いことなのか
分かりません。
「親」と呼ばれる立場の責任だけではなく、その中身が問われる時代でもあり、
それをAIに置き換えて、考えてみたかった。
書いた当時に言葉にならなかったものが、ようやく言語化された気分です。
なんだか、とても爽快な気分です。