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夢の国

8/12


明るい輝きを窓から漏らしながら、海の向こうに向かって長距離貨物用のモノレールが走っていく。
窓に立っている人々の姿を見ていなかったが、あれにはたぶん上級労働者たちがまばらに乗り込んでいたのだろう。
底辺労働者は二段下の連結式トロッコに載せられて、海沿いを海の向こうから、あるいは海の向こうへ、または山の方へ荷物と一緒に運ばれていく。
見ている分にはそのシステマチックな光景は見ていて飽きない。一定時間ごとにレールを走る上級労働者たちの列車の専用線と、分岐点を通って縦横無尽にトロッコが走りすぎる低級労働者たちの専用線が混じり合う瞬間の場所。向こう側には街があって、あちら側にも町があって、工場地帯は夜中になっても煌々と明るく稼働しており、当然のように低級労働者たちのトロッコ路線はひっきりなしにそこへ労働者を運んでいく。上級労働者線はすでに照明も消えていてあとは帰宅路線のみが動いているようだったが、低級労働者線は24時間稼働のようだった。


この町には所々に斎場があって、今わたしがいるところは公共の斎場だった。人家からかなり離れている場所にあって、倉庫地帯の外れにある。すぐ近くに遊園地があるが、こちらから遊園地を見ることはできても向こう側からはこちらを見ることはできないだろう。電飾で飾られた綺麗な壁が広がっていて、いつかはあの中に入ってみたいなあと思いながら、数多の労働者たちはこの斎場で燃やされていったのだろう。おそらくだけど、この斎場は貧困者専用の斎場だ。引き取り手のいない遺体を火葬しているのだと思う。
同時にここは釣りのスポットでもあり、地元民がよくこの近くの海岸で釣りをしている。
昼間には仕事もしていない人々がここに来てスズキをよく釣っているのだが、あるいは夜は、夜な夜な怪しい人々が集まってきて集会を開いている場所でもある。
そしてここは、昨日の道とは違って本当の行き止まりになっていた。
この先に道はない。
あるのは海だけだ。あるいは草だらけの獣道が続いているが、その先にあるのは、コンクリートに囲まれた縦横数メートルの小さな砂地とそこに集まってきて死んでを繰り返してきた貝たちの骸だけだ。

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