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みちくさの声と共に

5/10


今人の世界のなかでは、人を知る旅を続ける少女(?)の話が盛り上がっているところ。
少し過ぎたところか。
相変わらず私も人を知る旅を続けているところだが、奇妙なことにそれらはずっと目の前にいて、実はずっと自分だけがただ目を閉じていたことに気づくことができた。

話題の少女は人を知るためにもっと積極的に人と関わることでその悩みを克服しようとしていたが、私の場合は、ただ夜の街道の一歩裏手の、細い砂で続いている道の側一面に生えている草たちの葉の裏で、誰やら彼やらが一生懸命に生きているところを覗いてみて、彼らにひとこと、一緒に踊ってくれませんかとお願いをすることでその願いが叶ったようだった。

いつもなら一人、月夜の道の境界線の内側と外側のちょうど中間の場所で、誰も見ることのないワルツを踊ることでしか表現できなかった自分自身の足跡を、誰かと共に歩むことでその人のことを知り、知ろうと思い、影なき影に手を差し伸べて、一緒に踊ろうと誘うことで。
足跡の数は本当は倍になったのだろうけれど、影に徹する彼は謙虚そのものだったので私以外の足跡はあまり残らず。
でもたしかに彼と彼らはそこにいて。
私は彼らと、本当に久しぶりに、温かく楽しい夜を過ごすことができた。

一陣の風が吹いて月は満ち欠け、闇は闇に、草は草に、影もまた影にもどっては消えていき、私はふたたび一人の狂人へと戻ってしまったが、私が抱いた夜の温かい風の居心地は、きっと私の心に残り続けるだろう。

足元を見れば小さな虫たちが生命の営みをゆっくり確実に巡らせており、私もそろそろ虫たちの世界へと戻らないといけないと。


きのこは踊り、雨が歌う。風たちが詩を語り水辺の波が悠久の時を刻む。
観客は月で、指揮者は踊り子。

たった一人で踊り続ける、孤独な踊り子。
虫たちは、たしかに私に命を教えてくれた。
それが今日の発見。

彼の少女は人間を知ることができたのだろうか?
じゃあ私も、彼女の旅の幸先を祈ろうじゃないか。
それくらいの心の余裕が、できた気はするので。

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