4/28
縦穴を螺旋状に、左回りで進む列車は、いつの間にか右回りになっていて、トンネルに入ってまた出たと思ったらまた左回りになっていた。
勾配が続くのでこの列車は上に登っている。
無人の駅がいくつもあるが、駅を通過するたびに乗客は少しずつ減っていっていた。
駅を通過するたびに列車が汽笛を鳴らすし、上の彼方に見えるかすかな白い星の光は、十年以上前に見た景色とまったく同じのはずだった。
連れ立つ友もほぼ同じ。サックも服もあの時のままだ。列車は相変わらず上を目指して走っているのに、終点駅と始発駅が真逆になってしまっていた。
気がついたというか、そのように思った。
もしかして私は今、坑道を真っ逆さまになって降っているんじゃないか?
いやそんなはずはない。星は確かにそこにあるし、私の上下感覚は正常だ。
本当に正しいのだろうか。
あるいは……今私が感じているこの上下感が正常で、あの頃の私が走っていた列車があべこべの上下逆列車で……つまりあの頃の私が、狂っていたのだろうか?
そうとは信じたくない。人生が少しずつ順調な道に戻ってきたと思ってはいたが、今の自分はあの頃に比べてあまりにも……あまりにも弱くなってしまった。
あの頃は、虚空の彼方に強がりを言うのも仕事の一つだと口に出して言って黄金のウンコ💩をたたき台の上に鎮座させてこれが作品だと抜かしていたが、今出てきているのは三日月一本分すらない貧相なごぼうだ。
そんな私がサックを持って久しぶりに外に出てきたのに。
外に出ようとしていると思ったら、うちに篭ろうという旅をしていた。
自分が乗っているこの列車が、私は確かに勾配を上っていると感じていた。
星々の光はあの頃のままだし、連れ立つ友はあの頃となにも変わらないと思っていた。
私の名前を知っているか?
私の名前は……私は、泥だらけの哀れな人形。
日本語には無い言葉なのでこれ以上は言い表せない。
恥ずかしながら当時はこれが自分自身だと思って、いつか人並みになりたいと思ってこの名を名乗った。
そうしていつか、人並みになれると信じてこの長い螺旋状の坑道を少しずつ登ってきたつもりだった。
私はこの列車を降りるべきだろうか?
よくよく考えたら、今の私はたくさんの糸に縛られている。
でもあの頃の私は……「何もできない自由」だったのかもしれない。
※日本語訳
作品書けてません