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宇宙船解体惑星の世界

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太古の時代、数千年以上前の話だが、この星は巨大な騎馬民族が治めていた。
広大な平原、陸地に反して少ない海、海から閉ざされた塩湖、木々は南方の一極に集中していて、北方には誰も近づかない山岳が雪をたたえた広がっている。

陸地と草原の星だ。そんな世界だった。
やがて星の人々は、高度な文明を築くほどにはならずバラバラに散って終わった。
この星は閑散としていた。強さと騎馬の国は滅んだのだ。

それが宇宙からやって来る廃棄船の解体場に選ばれたのは、必然だったのかもしれない。
広大な空き地に大量の宇宙廃棄船が運び込まれ、公害とともに大量の移民、かつてない程の富をこの星にもたらした。

もっともその富とやらを手に入れられる奴は数えられる程度しかいない。
この星に元から住んでいた奴らはすでにどこかに行ったか、死んでこの星と一つになったかのどちらかだろう。掃き溜めの中で必死に生きる放浪者と出稼ぎ労働者とならず者、それだけがこの星の住人だ。

怪我も多く、病気になっても薬を口にできるのは一握りしかいない。それでもこの星には仕事がある。
誰でも良いのだ。この星では、船を解体できるなら下水溝の奥で突然変異を起こしたワームラットでもいいと言われている。
そうして働いて手に入れた生臭い帝国通貨は、だいたいは地表近くにあるドラッグマーケットで使い果たしてしまう。そうでなければホグビールか、女だ。この星に住んでいる奴らは、いつかこんな掃き溜めなんか出て行ってやると言っているが、実際にこの星から出られた奴を俺はまだ見たことがない。この星に流れ着いてしまった奴は、この星が家になるか墓場になるかのどちらかだ。


まともじゃない。
こんな大量の船をバラバラに解体していくだけで、あと何百年かかると思う?
こんなことをもう何十年もしていたら誰だって普通じゃなくなる。
かつて自分達が夢見ていた宇宙船を解体する仕事だ。
これが仕事だからやってるんだ。
畜生、こんな星いつか出て行ってやる。



酒場の落書き

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