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時計とカジノの世界

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今日はカジノに来た。
クラウディという名前のゴキゲンなディーラーが仕切るルーレットを遊んでいる。
いや一応「これから遊ぶつもりで席に今着いている」が正確。ルーレットは回っているしあらかたのゴーストプレイヤーたちのベットもちょくちょくと進んでいる。
ボールが今まさに投げられようとしているところで、自分はなぜここにいるんだ? と気づいたのが今だ。

クラウディが調子がいいのは、ディーラーにしてはずいぶんと軽くて寒いジョークを連発しているからだ。逆に客であるゴーストたちはニコリとも笑わず、まあそんな筋も筋肉も無いから笑えないし、なんなら気道も声門も無いから笑えないのだろうが、一辺倒にクラウディの寒いジョークが一方的に場を凍らせているのは事実だった。なぜならば、私が寒いからだ。

ただし目の前で回ろうとしているルーレット……もう回っているし、なんならボールも回り出したしもうすぐノーモアベット、締切の声がかけられるかもしれないタイミングで私はまだ賭けに乗り切れていない。


思っているだけだったはずなのに、クラウディに笑われた。あなたそんなに賭けて大丈夫なんですか、もうそろそろ財布の中身も半分くらいになってやしませんかって。

そういえば私はこのカジノにやってきて、すでに寿命を半分以上使い込んでいるような気がする。

やっぱり私は、クラウディが嫌いだ。
煙草の煙か霞か雲か。辺り一面が何も見えない。
何だったらあのゴーストたちはいったい何者なんだ。
私は外の人間と繋がりたいんだ。ここから出してくれ。



ノーモアベット。
そんなこと言われても、私は絶対に賭けないからな。
いいえお客さん、あなたもう充分賭けていますぜ。


ボールの落ちる先は……?

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