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ゴリラの世界

10/23

世界は少なくとも三つある。

一つは昼の世界。
人や物や概念は常に表層のみ混じり合い決してその裏側に触れることができない。

……触れることはできるけど、触れた途端にキチガイを見るような目で見られるような、お互いによそよそしく生きていなければならない世界。
みんなきっちりスーツを着て、鎧を着て過ごしているような、鱗魚と鱗魚が互いに自分のテリトリーを主張しあって威嚇してまわっているような世界。


もう一つは、自我と他人と、夢と境界線が曖昧になった世界。
鱗魚たちが鎧を脱ぎ捨てて、普段の食生活で腹に溜めた下痢を毒や綺麗事と一緒に垂れ流す曖昧模糊とした世界。
私はこれを夜の世界と呼んでいるけれど、それはもしかしたら不適切かもしれない。
きっちりスーツを着こなしたエリートサラリーマンも、水を含んでたゆんたゆんになった火薬袋の中身を飲み干して、弾丸と一緒に弾き飛ばす。その瞬間は、誰も彼もがまるで河豚が水を飲み込んだときみたいに大きく膨らんで、弾を飛ばす瞬間に一気に萎む。
はっきり言って悪趣味だ。どんなに昼の世界では立派な鎧を着込んだ魚であっても、もちろん自分もだけれど、夜の世界では弾丸河豚なのだ。

河豚だ。悪言河豚だ。
万人に対して毒針を飛ばす河豚だ。
そうして毒を下痢と共に吐き出して、すっきりした顔をしてまた昼の世界に戻っていく。



もう一つは、これはたぶん私だけの世界かも。

世界が、マインクラフトのように感じてしまう。
さざえ、イカ、ブロック状の山、丘、地面も空も、何もかもが理路整然としていて、すべてが理屈と計算でできていて。

当然見た目だけがそう見えているだけで実際は違うので。
まるで、それらが、ブロック状のように見えているだけの得体の知れないジェルか何かのように感じてしまう。

手で掬おうとしても、それらは指と指の隙間から出ていってしまうのだ。

この世界はブロックのように見えてしまう。
けれどこの世界は、ブロック状ではない。

どこかがなのかしら欠けている、見た目だけ綺麗であろうとしているだけのただの使えない物たちが、完璧であり続けようとしているだけの……

細胞の足りないアメーバ?


そのアメーバたちが、互いに互いをピースが足りないだのパーツがおかしいだの荒唐無稽だの無茶苦茶だの、言い合って、他人にも自分にも攻撃的になって、いるような……




小説でも書いて黙ってよう。
人間怖い。

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