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海の底の世界

10/2


 海の底は砂漠に似ている。
 何もない砂地が永遠に広がっていて、どこまで泳いでも何もない海底が続いている。
 それでも人によっては、この砂の世界に世界に一つしかないものを見出していて、それをサルベージするのに大金を支払うと言ってくる人がいる。

 まあ自分はフリーのサルベージ屋なので自分で見つけた金目のものを海底から引き上げて、それを市場に持っていって売るだけだ。まだ依頼はないのだから、これでいい。


 いつか自分が凄腕のサルベージ屋になれたなら、自分にも依頼が来るようになるのだろう。
 今日は家庭に転がっていた旧都市間鉄道の車体を見つけた。
 半分砂に埋もれていた車体をひっくり返してみたら、案の定誰かが置いていったカバンがいくつか見つかった。

 カバンの中にはだいたい旧紙幣が入っている。こいつを拾い集めればガソリン代くらいにはなるだろう。


 こんなしけたことをして何になるのだろうかとたまに思う。
 バディには内緒にしているが、実はたまに船の燃料を酒の代わりにして飲んでいる。
 まずいが、酔えるのだ。
 酔えば仕事も捗る。酔わなきゃ、余計なことを考えてしまうからだ。

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