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枯れたトウモロコシ畑の一角に、実はこの世界の住人も知らない裏世界が用意してある。
用意したのは私の主人、私をこの世界で操り、この世界の真相を探る使命を果たそうとする男。
便宜上、男と言ってみたが、もしかしたら女性かもしれない。
ただ私は、彼あるいは彼女の操縦するようにこの世界を探索していく。
私は彼あるいは彼女がなぜこの世界の真相にこだわるのかはわからない。私としては、人狩りに見つからずに平穏にこの世界を生き続けたいと願っている。
それがある日、叶いそうもなくなって、その時に突如現れた彼? に、判断を迫られて今に至る。
生きて自分の指示に従うか、それとも死ぬか。
ぎいと、今日も恐る恐る扉を開いて研究所の中に入る。
空気の循環が一切ないので、地下室は極度の湿気でムッとしていた。
梯子を降りると、かすかに空気が流れているのを感じた。
この空気の流れに沿って地下研究所の奥へ進む。
この世界の真理というものがもし見つかったとして。
私の主人は、それを壊すことを使命としているようだった。
なぜ壊すのか、壊したあとこの世界はどうなるのか、壊れたあと、私は一体どうなってしまうのか。
それから、もしこの世界が壊れてしまったとして、あなたはどうなるのか?
この世界を司るキーのような物は、主人はあと90個くらいはあるだろうと言った。
それも正確ではないらしい。この世界に散りばめられたキーは、中央コンピュータと接続されている……的なニュアンスだ。
要はこの世界の生き物、機械化された都市、都市の住人たちが知るはずもないこの閉ざされたシェルターのすべてを管理しているコアとそれらキーは繋がっていて、セントラルコアを破壊するためにはまずすべてのキーを見つけ出して接続を切らなければならないらしい。
キーを切ると一つずつどこかのセクションが機能停止になるのだろうとは思う。
けど、この世界はすでにほとんど死にかけている。
人狩の横行する郊外。
奴隷化……奴隷や家畜よりもっとひどい、道具とか工具の扱いに近くされた郊外生まれの元人間と、市民権を持っている町の人、海と一体化するために遺伝子改造をされた果てに破棄されて、町の廃墟区を泳ぎ回っている魚人とか。
人が人だった頃のテクノロジーを、遺産とか、遺跡と言って開拓している探検者とか。
私は主人に何度も殺されて何度も生き返らせられているのでこの世界のことはよく知っているが、遺跡とは、自分たちがまだ科学技術を持っていたころに作り出した産業区画やそこへ通じる鉄道網のことだ。
町の市民たちが乗っている無人走行列車は、昔の人たちが過去に作り出していた普通の世界の産物だ。
郊外に住んでいる自分たちの親戚は無人列車にすら乗れない。
でもそれは、昔は誰でも乗れたものなんだ。
廃棄された旧産業区画、水没した旧研究区画、今は発電所の熱排水路として再利用されている水路は、昔は大きな港だった場所。
主人は私に、もっと奥へ潜っていけと指示した。
なぜそんなにこの世界のキーにこだわるのだろう。
私は主人の言葉を断れないのでその通りに進むしかないのだが。
もっと深く。
もっと奥へ。人狩も魚人も開拓者でさえ到達しえない、この世界の深層へ。
そして破壊する?