• に登録
  • SF
  • エッセイ・ノンフィクション

自宅

9/20


残暑の残る夜中の一軒家。

食事も風呂も終えて、三人はそれぞれめいめいに好きなことをしてから過ごしていた。

一人はソファに座ってテレビで夜のニュースを見ている。
もう一人は扉を開けて外に出かけていったが、またすぐに戻ってきて二階の自室に上がり、また降りてきて外に出て行く。
でもまたすぐに戻ってくる。落ち着きのないやつだ。

私はキッチンカウンターの備え付けの椅子に座って、雑誌を読んでいる。

雑誌と言っても、電子書籍。
ばたばたと白い同居人が部屋を行ったり来たりしているのを尻目に、この前雑誌に書いてあったことを思い出しながらパラパラと雑誌のページをめくり続けた。


よく過去を観察しろ。
過去をよく知り、過去がしたこと、していない事を知る上で、過去をよく見るのは大切だと書いてあった。


私はソファに座る黒いやつを見た。
相変わらずテレビは夜のニュースをやっていて、天気予報とか、今日の株価の終値だとかを流している。


黒いやつは姿勢を変えないで、ずっとニュースを見続けていた。
私の座っている場所からは、彼女がどんな顔でテレビを見ているのか見えない。

もしかしたらテレビなんかも見ていないのかもしれない。
いつもの考え事をしていて、そのためにテレビを流しているだけなのかもしれない。


この日記……もう日記でいいや。近況ノートを書くのは読者のためというよりも、自分が自分でいるために解いているクロスワードパズルのようなものだ。
告知はしたいけど、告知するものは何もない。
私は雑誌のクロスワードパズルを解くことにした。

するとだ。
さっきから家を出たり入ったりしている白いのが、バーンと大きな音を出してまた帰ってきた。

「前に聞いたヒーローを連れてきたよ! しかもとっておきの!!!」

白いのは自信満々に玄関に突っ立って、後ろの長身全裸の男を指さした。

「仮面ライダー!」

いや全裸じゃないか。

「自分の中の悪しき批判者と戦ってくれる、強い味方だっ!!」

だから全裸じゃないか。

「変態パワーで理性をノックアウトしてくれるっ!!!」

だから、全裸じゃないか。
長身の男は頭にパンティをかぶり、筋肉質な細身をくねっとさせてポーズをとった。



だから。全裸じゃないか。

ソファに座る黒いのを見ると、彼女は相変わらずテレビを見たまま動かなかったが。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する