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遠い異国の地で作られた「飲む」という飲み物を飲んでいて、その泡の中にふと昔の自分の横顔をのぞいた気がした。
この「飲む」という飲み物には苦草を絞って混ぜると言う製造工程があるらしく、よくはわからないが、これが幻覚か何かの作用を生み出しているのかもしれない。
この「飲む」という飲み物はまた滑稽なもので、名前が「飲む」と言うのにカップに注ぐとどうやってもカップの半分ほどが泡になって飲めないのだ。
だからしばらく泡が消えるのを待ってからまた「飲む」を継ぎ足すのだけど、その待っている時の泡の香りがほどよくあまく、香料のようにいい匂いがした。
飲むと酸っぱい。酸味ほどではないけれど、僅かに酸っぱさを感じる。
苦草の苦味は表面的なところにある気がするが、それ以外にも発酵酒特有のフルーツのような甘味も感じる。
これが私にとっての、あの頃の私を泡の中に紡ぎ出すきっかけだったのかもしれない。
あの頃の私は当然無知だった。
今でも無知だが、それよりもはるかに無知だ。
大した悩みなんかもなかったし、今は死んでもういない祖母も元気で、出かけるときの弁当をよく作ってくれていた。
そのときの私は反抗期真っ盛りだったのでその弁当を拒否していたものだが、なぜ拒否をしたのか、その理由は当時の自分にしかわからないものだったと思う。
あの頃の私はバカだった。
悪いこともした。具体的には言わないが、一生残る悪いことをした。結果としてその時したことはまだ自分の中に残っているが、あるいは逆に、自分はあの頃に犯した罪のために、その頃から一歩も動けないままでいる。
今そのた建物は新聞社の大きな本社ビルになっているようだが、その頃そこは子供達の溜まり場だった。
当然私も彼らと混じって遊んでいたのだ。
あの頃じゃ信じられないことを今の私はしているが、今の私では絶対にできないことを、当時の私は当然のようにしていた。
私はそれ、を、そこに置いて成長したのだ。それから時は経ち、私は今、ここにいる。
しかし当時の私はまだ健在で、そこにいて、まだ子供の遊びを続けている。
あの頃やったことに後悔はない。後悔はないのだろうか。
本当に、後悔していないのだろうか。
泡の中の牢に閉じ込められたおまえは、今なにを見て、なにを夢見てるんだ?
泡は何も答えない代わりに、私はそれを一息で飲み干した。
苦くて甘い泡だった。
じゃあもう一杯いこうか。