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対岸の旅人を石人族の沼渡しが担いで戻ってきて、湖畔の村にはいつもの二倍の人間が集まるようになった。
石人の渡しは休まずすぐに出るとのことだったので、私も石守りに金を払って石人の肩に乗る事にした。
急いで石人に乗ったものだからまともに対岸の人々らと話を聞く事はできなかったが、話し声を聞くに対岸とこちら側では国が違うようだった。
それに沼のほぼ中央には砂の小島があって、そこはどちらの国にも属さない中立のようでもあるとのこと。
島に人はいないが、小用はたせる。
国が違うと言っても、ここら辺では国というより町が違うと言った方が正しいか。
町が違えば風習が違う。言葉が違えば価値観も違う。
今ここで通用する正義や常識とやらも、一歩境界線を踏み越えれば途端に異端の考えになる。
この世界に常識は通用しない。
今手持ちにしているこの金だって、いつガラクタに変わることやら。
そういう、自分の世界の限界を目指して今日も旅を続けている。
霧が濃い。まるで腐った魚の臭いだ。