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八面体の宇宙では、すべてが八面体の空間で仕切られている。
どこかの古代妄想癖をもつ神が、この世の最初に「光あれ」と言うところを誤って「八面体あれ」と言ってしまったせいだ。
この世は八面体で溢れていたが、八面体だけがすべてではない。すべてが八面体の立体物で構成されているだけで、すべては確かに存在はするのだ。
ただ、例えば揺らぎや時間という面では区切れないものは存在しない。あるのは多くの微細な八面体を目に見えないほど小さくして、遠目に見たら一本の直線に見えなくもないようなものや、八面体で構成された『空間』の歪みによって再現された擬似的な空間の変化。
宇宙のバブルを構成するものは全て八面体だったし、宇宙に散らばる微細な原子が持つ重力同士が結びつき、ヴォイドと呼ばれる無の局地と無の局地を微細原子集団が区切った形も八面体。微細原子同士が繋がりあってできた小天体も八面体。その航路も八面体。小天体同士が重なり合ってできた大天体も八面体。光のは超も八面体。
何もかもが無茶苦茶なこの世界は、こうして八面体で溢れていた。
そういう自分こそは何者なんだ。自分自身は八面体か?冗談じゃない、私は私だ。
狂ったこの宇宙の中でも、正気を保てるだけの精神力は持っているつもりだ。
どこかのバカな神様が思いつきのデタラメを言ったばかりに、この世界はテトリスのブロックのようなもので埋め尽くされてしまったが、それでもなお私は、この宇宙の中で、ブロックに埋もれないように隙間にひっそりと生きているんだ。
世界は八面体だと?
バカめ、正八面体でこの世を埋め尽くして、それからどうするつもりなんだ。
と、私はストロングゼロをグビリと飲んで目の前の正八面体キューブをちょんとつついた。
ブロックは連鎖的にあちこちにぶつかっていき、まとまりがなくなるほど際限なくぶつかり続けた。
とても嫌な予感がしたので、私はもう一口だけストロングゼロを飲んだ。