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終わりが終わらない国



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誰もいなくなった研究所のロビーで、心優しい少年リグは親友のミギーと並んで座っていた。
リグはうまく物が喋れない。いつも決まって、言いたいことがあってもうまく口が動かなかった。
けれど親友のミギーはいつも不思議な力で、リグの言うことをすべて完璧に理解してくれた。
リグにとってはミギーこそが親友だし、世界にはミギー以上に自分を理解してくれる人はいなかった。
例えばこの研究所の外がどういった世界なのか、空が青いとはどう言うことなのか、研究所の外ではくうきがきれいで、たいようがまぶしいのはどうしてなのか、そう言ったこともミギーは色々教えてくれた。
リグにとってはこの研究所の中がすべてだったし、自分の頭が天井にあたらない部屋は、何日かに一回の部屋のクリーニングの時に入れられるとても狭い箱の中だけだ。

お母さんに会いたいと思った時、研究所の人たちはリグにはお母さんはいないと教えてくれたけど、賢いミギーは研究所の人は嘘を言っていると教えてくれた。
研究所の人は、自分たちはリグの友達だと言ってくれたけど、あの人たちは友達じゃないってミギーは言っていた。

どうして誰も自分に優しくしてくれないのだろうとミギーに聞いたら、ミギーは、外に出れば本当の友達と遊べるよと教えてくれた。

ここから出るにはどうすればいいの? と聞いたら、次の配膳の時に職員の人を捕まえたら外に出られるよと教えてくれた。

ミギーはやっぱり賢いんだ。僕なんかよりずっと賢い。きっと外ではみんなに人気者で、友達思いの優しい奴だって言われているんだ。
僕もミギーと友達になれるかなって聞いたら、ミギーは、僕たちはもう友達だろって言ってくれた。

厚いドアなんかいくつも開けて、外を目指して行ったんだけど、この研究所はとても入り組んでいてしばらく外には出られなさそう。
でも食べ物には困らないよね。だって、ごはんはそこらへんにいくらでも転がっているもの。
ミギーは賢いね。どうしてこんな簡単なことを、僕は今まで思い付かなかったんだろう?

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