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夕日の国

3/12


今日。
私は写真を捨てた。
今までたくさん撮ってきた写真をファイルごと捨てて火をつけた。
それはメラメラと勢いよく燃えていって、あの頃の記憶と一緒に熱を通じ、溶けて穴が空いて、燃えて消えていった。

黒い煙と一緒にあの頃の思い出が空を舞った。散り散りになった思い出のいくつかが、楽しかったこととか、辛かったこととか、いろいろなこと、思い、感情、何もかもが火を通すことで一色になっていく。

夕日に飛んでいる蝙蝠たちとともに。
それらは宙を舞って、月と共に浮かび、いつかどこかに落ちるだろう。
夜空には星がある。
あの頃の空には星があった。いくつも写真を撮って、こっそり胸ポケットにしまっていたけれど、もういらない。

本当は必要なのかもしれないけれど、そろそろ大人になれと、大人になれない私が催促する。


箒で履いて一つにまとめて、マッチで写真に火をくべる。
夕日と夜の境目の時間。
過去も、未来も、ここでは一緒くた。
ああまた写真を撮ってしまった。
こんなに世界は綺麗だというのに。
これも、火に焼べるべきなのか?


ある日、誰かが言っていた。大きすぎるプライドや夢と希望は燃えるゴミや粗大ゴミで出すものなのかって。
その人は答えを見つけれたようだけど、今度はどうやら私の番のようだ。

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