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※この近況報告は、高度な散文で描かれています。
作者の心境や公開予定や言い訳など、ぜんぶ行間に詰め込んでいます。
がんばって読みといてみてください
曇天の夜空に、小さな雨雲がひとつ、ふたつ。
低い雲が郊外の光に照らされて、淡い白色に光って見えている。
例年ならあと三ヶ月もすればクリスマスツリーとして飾り立てられる大きな白い塔も、今の時期はただ煌々とした青い光を塔の頂点で光らせているだけで、特に目立って飾り建されているわけでもない。
雨が降ることを私は知らなかったので、バイクを路肩に止めて一休みすることにした。
いま、私は日記を書いている。
手紙のようで、手紙でもない。宛先不明の本当にくだらない手紙のようなものだ。書き出しはやあ、元気にしてる、私は元気だ、今私はここにいて、これから道沿いを走ってずっと先に行くんだ、目的地は遠いけれどまだガソリンがあるうちは走り続けるつもり、そんな調子で、相手もいないのに手紙を書いている。
手紙の宛先は、ぬえ。夜の妖怪。
妖怪はいつもバイクの荷台に座り込んでいて、物も食わず水も飲まず、ただじっとバイクの後ろにくっついている。
気持ち悪いやつだなと最初は思っていたけれど、旅が長くなるに連れてまるで友達のように思えてきた。
手紙の宛先をぬえにしているけれど、当然ぬえは、手紙なんて読まない。
ぬえは友達だ。自分がそう思っているうちは、彼は自分の唯一無二の友達だ。
ある人のバイクはしゃべるという。この世界のバイクは、しゃべらない。
風が冷たい季節になってきた。そろそろ、あたたかい家に戻りたいと思いつつある。
旅はまだ終わらない。
まだ、終わらない。いったいいつになったらこの旅は終わるんだ。
本当に終わるのだろうか。
郊外はしばらく続く。
明日には別の街についていると思う。このまま走り続けられれば、私はしばらく前に進める。
もうすこし。もうすこしだけ前へ進もう。