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片方は汗がにじむくらいに湿った暑い世界。
肌を不快な熱気が包み、むっとする湿気が右手の指と指の間の冷気すら見逃すまいとするような熱地獄。
もう一つは、極寒。砂漠のジャリジャリした砂のような冷気が足の間に溜まった暖気すら無くそうとする勢いの冷気の世界。
一つしかない頭はそのどちらの温度も肌で感じ、その暑さ寒さに脳をシェイクされて、参っている。
この世界は、暑いのか、寒いのか。
この狭い箱庭はいったい何度の国なのか。
温度計はいま手元にない。
手元にあるスマートフォンで気温を調べてみようか。
そう思っても、その行いが馬鹿げている事だと思って、やめる。
箱庭の国は動いている。前後左右に、あるいは上下に動き、口を開きたまに外界の空気を内側へと受け入れてまた口を閉ざす。
チャンクチャンクと金銀財宝、自転車の廃材、破れたゴム片、赤く光る鉱石、誰かの目、砕かれた頭蓋骨、ダイヤモンドが波のように寄せては渦を巻き、引いて撹拌する。
自分は蛇か何かに飲み込まれたのか?
溶けたボロ切れが自分の手足にまとわりつく。
指先に硬い何かが絡まって、それが人骨だと気がつくまでにかなりの時間を必要とした。
生きようと思い、掴めるものはなんだって掴もうとした。
そうして汚物とともに外の世界に吐き出され、自分は別の何かにまた飲み込まれた。
そこにもまた、死体がいた。
汚泥と死体とボロ切れとゴミ。
渦を巻くように自分は巡り、骨とともに絡まり、混ざり合い、溶けて吐き出される。
そうやって、なんどもなんども吐き出されては飲み込まれた、飲み込まれては吐き出される、世界。