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海の中の巨大魚

01/06

大小様々な、手つかずの島々が点在する海の上を白波が走っていく。
白波が、大きくなったり、小さくたゆたったりしている。

自分は、サーフビードに乗っている。
この波に乗らなければならない。
だが、まだ乗れないでいる。
サーフボードは波の上をゆったりただよっている。
この地上世界には、自分だけ。


この世界を、俯瞰している自分がいる。
自分はこの世界を、上から見ている。
まるで魚が、世界をしたから見上げているように。
海の上に広がる大きな空を、その魚眼レンズの目で見ているように。
小魚、大きな魚、肉食魚、おとなしい草食魚、クジラや知性をもった生きものたちが、海を泳いでいくように。


空の上から自分を覗く。
まるで、波の上を漂っていて、いまだ自分の波に乗れていない自分自身を見上げているように。
体温を上げていこう、そう思っても衝動は深い海の中。
時間がない。時間がない。
まわりに時間を崩されて、まるで自分の波をつかみ切れていない。それが誰のせいでもないのは皆わかりきっているのに。
そんな自分の焦りを見透かしているような、そんなやりきれない目で、よどんだ目で、自分自身を海の底から見下ろしている。
まるで潜水艦のような、深い海の中をゆっくりただようような、黒い瞳のハンマーシャークのように。
死んだ自分の情熱だけを、ただただ下から狙い続ける腐肉食性の臆病な巨大魚のように。

大きな尾びれがゆっくりと動けば、一対のマリンスノーがすうとのびる。
それが四対。八対。幾重にも広がって虹のように輝き出す。
マリンスノーは白いまま。巨大魚は今日も、冷たい深海をただようだけ。
ああやるせない。
私はやるせないのだ。
死んだ瞳で巨大魚はつぶやく。そんなつぶやきも、海の中の泡のひとつ。

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